食うか食われるか















!注意!
やんわりとツナがスレてるようなスレてないような……。
キスやら血やらがあります。






















(まだかなぁ……)

 こつん、こつん、とゆっくり歩を進めながら、綱吉はある一人の人物を想う。
 そいつはいつだって神出鬼没で、捕まえたと思えば霧散し、逃がしたと思えばそこにいる。任務を頼もうとするといないし、それでいて頼んでないのに敵対勢力を駆逐してたり、基本的に性根からしてひん曲がっている彼は綱吉の思い通りになったためしがなかった。
(でも、今日の俺は本気だぞ、骸)
 覚悟しろよ、なんて正面から言ったら逆にこちらが覚悟するハメになるので、心の中で思うだけに留まる。
 綱吉の想い人の名は、六道骸。名前の通り少々ブッ飛んだ人物なので、ちょっとした失敗が震え上がるような恐怖になって返って来る。だからこそ慎重にならざるを得ないのだが、それだと今まで通り会いたい時には会えず、いてほしくない時(敵マフィアとの会合の時とか)に限っていらっしゃるという、大変よろしくないことになるだろう。本当に面倒臭い。一連の骸に関わるあれこれを『面倒臭い』の一言で片付けられるほどには慣れてしまったけれど。
 はぁ、とため息をひとつついて、綱吉は歩き続ける。
(ホント、まだかなぁ……)

 こつん、こつん

 …、…

 人気のない廊下をどこへ向かうでもなく進みながら、音にならないほど静かな足の運びを感じて、綱吉は少し焦り始めていた。骸にしても現実にしても、本当に思い通りにならない。

 こつ、こつ、こつ

 …、…、…

 足を速めれば、もう一人も綱吉に合わせるようについて来た。それは徐々に、だが、確実に距離を縮めている。そろそろ相手の射程距離に入る頃だろう。
(……遅い。遅いっ、遅い! もうこんなに近いんですけど!)
 いらいらもやもやして、綱吉は更に足を速める。もはや競歩だ。いっそ走った方が潔い。そして当然のようにもう一人も速度を上げた。

 がっ、がっ、がっ、がっ

 っ、っ、っ、っ

 高級な絨毯が悲鳴を上げるほどに荒々しく踏みつけて、綱吉ともう一人は歩き続ける。
 そしてついに、


「ボンゴレ10代目、お覚悟を」


 そんなお決まりの文句は、思いの外近くから聞こえた。
「っ、骸っ!!」
 咄嗟に振り向きながら想い人の名を叫ぶ。視界には最近活躍のめざましかった新人が無表情でナイフを振りかぶる姿が映った。と、

 ぞんっ……

 肉を断つ鈍い音。同時に暗殺者の素顔を見せた男の首が高く飛んだ。反射的に目で追えば、天井に当たり壁に当たり値の張る花瓶を割って床に転がった。そして思い出したように断面から血が噴き出す。

「あなた、馬鹿ですか?」

 何のひねりもないからこそ手痛い台詞は、血しぶきの奥から響いた。他人の血をシャワーみたいに感慨なく浴びながら、彼はいた。
 ごとんと二人の間に挟まれていた首無しの身体が倒れ、視界がクリアになる。
 綱吉を真っ直ぐに見つめる侮蔑を含んだ瞳は、鮮やかな紅と蒼。血の似合う肌はまるで白磁のよう。身体のラインを強調するブラックスーツは血を吸って尚黒く、決して他の色に染まらない彼そのものを表しているかのようだ。青みがかった美しい色合いの長い髪に血がこびりついたことだけが少し惜しい。
「側近をわざわざ遠ざけたあげく、自らを囮にしてまで裏切り者を釣るなんてね」
 呆れを隠しもせず溜息をついて、骸は槍をひと振りして血を落とした。それだけなのにやけに様になっているのがなんとなく悔しい。自然、綱吉の口の先はとんがって、拗ねた声が出る。
「……ふんっ。釣りたかったのは、裏切り者なんかじゃなくてーー」

「“六道骸”と書いて“うらぎりもの”と読む。知りませんでした?」

 そう言って浮かべた笑顔は綱吉がもっとも恐れる類のもので、背中に冷水を垂らされたかのように身体に震えが走る。無意識のうちに足は一歩後退していた。
「ほぉ?」
 骸の瞳に剣呑な光が宿り、その手が素早く動いた。そう知覚したのと喉から苦しげな息が飛び出したのは同時だった。
「ぅッ……!」
 喉に骸の指が食い込んでいた。息が出来ないほど深くはなく、しかし顔色を変えずにいられるほど浅くはなく。いっそ優しさを感じるように丁寧だった。
 そう、今綱吉は酷く丁寧に苦しめられていた。最っ悪だ。
「呼んだのは君のくせに、いざ来てあげたら逃げ腰ですか。酔狂ですねぇ」
 くくっ、と喉を鳴らして笑う骸に、綱吉は僅かな苛立ちを感じていた。誰のせいだと叫びたかった。そして同時に、来てくれてありがとう、とその薄い胸に飛び付きたかった。その相反するどちらもが実現出来ないのは、精神衛生上良くない。
「……は、な……せ……っ!!」
 どうにかこの事態を打破したくて、綱吉は額に焔を燈した。途端全身にみなぎる力を駆使して、綱吉は骸の手を掃った。けれど、あっさり喉の圧迫がなくなったのは、骸がその前に手を離したからだった。怒りのやり場というものを考えてほしかったが、むしろ今綱吉こそが骸の八つ当たりを受け止めている気がする。
「けほっ、ぇほっ」
 両手と膝をついて必死で息を吸う綱吉を、骸は手を差し伸べるでも謝るでもなく見つめていた。それはそれは愉悦に満ちた表情で。
(ち、ちっくしょう……! けどなぁっ、今日の俺はこれくらいじゃへこたれないんだーー)
「っつのぉ!!」
 死ぬ気の焔を燃え盛らせて、綱吉は両手のバネでもって上体を跳び上がらせた。
「な!?」
 そしてーー

 ちゅっ!

「っ……!!」
 ちょっとばかり攻撃的なキスをお見舞いしてやった。間近で綺麗な眼をひんむいて固まる骸のレアなことレアなこと。それを見れただけでも生命を危険にさらした甲斐があったというものだ。血の臭いさえなければもっといいのに。
 一人満足する綱吉とは対称的に、骸はわなわなと肩を震わせて後ずさった。余裕ぶって微笑んでみたが、綱吉とて何かが限界だったのでそれ以上追い縋ることはさすがに出来なかった。
「……っ、っっ、かっ、だっ……!!」
 喉の奥にものすごい量の罵詈雑言がつかえているらしく、骸の声は言葉になっていなかった。
自分より大変なことになっている人を見ると不思議と落ち着いてくるもので、綱吉は自身の企みの成功に味をしめてにやけた。
「天下の骸も不意打ちには弱いんだな。いいやり方を知ったよ」
 これからもこのやり方でいこうかな〜、なんてチラチラ骸の方を見やってけらけら笑い出した綱吉は、すぐに後悔することになった。

 ぐぃっ!!

「どぅぇっ!?」
 胸倉を思い切り引っ張られて綱吉の身体が骸の方へと傾いた。
「んぅっ……っ……!!」
 ぬるりと口内に侵入してきたものに舌を搦め捕られ、今度は綱吉が硬直する番だった。

「……っは。生意気なんですよ」

 にやり。綱吉よりよっぽど似合う嫌味ったらしい笑みだった。そのくせしてそれは不覚にも綱吉の胸をバクバクと騒がせ、ゆでダコ顔負けなんじゃないかと言うほど頬を染めさせた。
 すごく熱い。
「……っ、血の味っ、した!」
「これに懲りたら、会いたい時は会いたいと素直に言うんですねぇ。ま、必ずしも来るとは限りませんけど?」
 とん、と綱吉の太鼓みたいに鳴る胸を押して、骸は背を向けた。
「でも、きちんと素直におねだり出来たら、ご褒美はチョコレート味のキスにしてあげてもいいですよ」
 ディープなやつをね、と囁く声も、滑らかになびいた髪から香るどこか甘い匂いも、何度だって綱吉を酔わせた。チョコなんかより、ずっとずっと骸は蟲惑的で、甘い。
(ひ、卑怯だ……!)
 用は済んだとばかりに悠々と歩き去る彼の後ろ姿に見惚れ、綱吉は動けるはずもなくーー。
(卑怯だっ!!)
 マフィアの流儀に染まっても、血を見て動じなくなっても、血の味を知っても、綱吉は綱吉に過ぎなかった。 

「絶対っ、諦めないからなぁぁぁぁぁぁ!!」


(あんな腰にクる顔されて諦められるかッ!!)














刹那様からのリクでスレツナでした。
はい、すいません! スレてない! 全然スレてないね!
ちょっとアグレッシブなだけだぁぁぁぁ!!
管理人の限界を知りました……。
そしてなんだかんだで結局6927になったのは、管理人の愛ゆえです。というか、どうやっても696さんが27に屈してくれなかっただけです。


2008.9.21