学校に行こう!〜2時間目〜
「は、はーい、2時間目は社会です。気を取り直して、みんなで歴史を学びましょうね」
凍った空気を温めようと引き攣った笑みを浮かべ、哀れな女性教師は殊更明るく授業を始めた。
「…歴史…ですか」
「お、おぉ、なんだ、興味ありそうだな」
ジョットも多少の責任を感じているのか、なんだかちょっと苦々しい笑顔で盛り上げようとしていた。ちなみに、一応父兄扱いのはずなのだが、少なくとも骸よりは教室に馴染んでいる気がした。
「興味と言うか、長く生きているもので歴史にはそれなりに詳しいんですよ」
「あら、ムクロくん歴史得意なの?」
「ええ、まあ」
「例えばどんなことを知ってるの?」
「例えば…そう、拷問史とか」
「「…!!」」
途端立ち込める不穏な空気に大人二人は慌てふためくが、何か言おうと口を開いたその時、
「せんせー! ごーもんって何ですか?」
無邪気で残酷な質問が生徒から飛び出した。
「え!? い、いや、えーと、拷問っていうのはね、えー…その…何て言ったらいいか…」
「だ、だからアレだ、ホラ…! そう、そのっ…えー…」
「拷問と言うのはねーーー」
割って入ったのは、R指定に直通の単語を出した当人だった。
「「!!」」
((なんとか場を執り成そうとしたのに…!!))
そんな大人二人の心の叫びもなんのその。よく口の回る骸は、問答無用でその弁舌をふるいだした。
「元々は罪人に自白を迫るために編み出されたもので、古くから進化を繰り返して来た、人間という生き物の本質を如実に表した行為ですね。とは言え、今も昔も主に痛みに訴えるところは変わりません。精神的に虐めぬいて自白させることも多いですが、この場合は長期に渡ることがほとんどで、あまり効率的とは言えないでしょう。よって、現在ではもっぱら肉体的苦痛を与えて自白を促します。水責めや塩責めなどの自宅でも簡単に出来るものは、古くからよく使われる方法ですね。昔よく見た光景では(〜中略〜)だったりしたものです。しかし最近は人道的な見地から庭先でそんな光景が見られることもなくなり、地下室なんかでひっそりと行われるようになりました。そしてそれは公にできない趣味として貴族などに広まっています。
ああそういえばここの生徒達は貴族のご子息・ご令嬢方でしたっけ。いい機会ですから、家に帰ったら地下室を探してご覧なさい。父上・母上の意外な一面を発見できるかもしれませんよ?
おっと、話がそれてしまいましたね。貴族の趣味として器具の需要が高まった結果、貴族がパトロンとなって様々な拷問器具が開発されました。挙げだしたらキリがないですが、一例としては火攻め椅子だとか親指締め器だとかリッサの鉄柩だとか(〜中略〜)だとか、最初は自白を促すためのものでしたが、今では単に嗜虐願望を満たす目的が主になり、最終的には生命を奪うのが当たり前になりつつあります。例えば鉄の処女などがそれですね。あんなもの、徐々に迫る針に恐怖する様を楽しむもので、実際蓋を閉めてしまえば案外呆気ないものです。急所を外すように針がついていますけど、暴れる人間にきちんと正位置で使用することは素人には難しいんですよ。まあ痛いのは痛いですが、死を恐れなければ他の拷問方法よりはいくらかマシですね。自分でうまく調整すれば割と簡単に死ねますから。
ひどいのは日本や中国の拷問ですかねぇ。基本的に器用な人種なので、皮を剥いだり骨に彫り物をしたり縛ったりと、変なところで無駄に巧みなんですよね。そんなわけであちらはこちらのように器具に頼るより、あくまでその方法・技術に重点が置かれています。つまりは、簡単には死ねないし、変に複雑化されていないので幼い子供でも老いた老人でも恐怖は同じなんですよ。方法も人それぞれ。器具などという決まった物がないから、次に何をされるのかの想像が出来ないんです。うまい拷問なんて受けたくもありませんが、拷問官のテクニックに頼ることが必然的に多くなるため、運が悪いととても長く苦しむことになりますね。例えば僕の体験談ですが、中国のとある(〜中略〜)とか(〜中略〜)だとか、他に日本では五寸釘を間接という間接に打たれたことがありますね。実に単純ですが、これがなかなか堪えましたよ。間接って意外とたくさんあるし、何より指なんかだと間接と間接の距離が近いでしょう? その結果、釘を打たれる度に別の間接がいちいち軋むんですよ。すると割れた骨が振動して、内側から想像を絶する痛みがーーー」
きーんこーんかーんこーん…
「………」
「………」
「ひぐっ…ぐすっ…」
「ぅっ…ひっく…」
きーんこーんかーんこーん…
「………」
「………」
「えぐっ…うぇっ…く」
「あぁ〜ん、っく、ふぁっ…ひぐっ」
「ああ、もっと語りたかったのに…」
「………」
「………」
嘘ばっかです。似非知識です。そしてまだ続く・・・。