学校に行こう!〜0時間目〜




「あっ!! 大事なこと忘れてた!!」
 サイン漬けでへばっていたはずのジョットががばりと上体を起こし、妙にうきうきした様子で骸に視線を寄越した。
(……嫌な予感がします…)
 ただならぬ悪寒に後ずさりながら、それでも気になって骸の口は疑問を声に出してしまった。
「…何です…?」
 その瞬間、にやぁ〜とジョットが気持ち悪いくらいの笑みを浮かべてーーー。














「はーい、今日はみんなに新しいお友達を紹介しまーす! みんなもよく知ってる、ボンゴレのジョットくんの息子さんの、ムクロくんよ〜!」

 わ〜、ぱちぱちぱち

「よろしくお願いしま〜すーーーなんて言うと思ったかこの花畑馬鹿!!」
「ぐべっ!!」
 どげしっ、と鈍い音と声と同時に小柄な男がぶっ飛んだ。
「なぁにが“わ〜、ぱちぱちぱち”ですか! 効果音を口で言うな!」
 どこかズレたツッコミを入れながら、骸は苛々と眉をしかめて床に転がるジョットに侮蔑の目を向けた。大体、自分でジョットくんだとか、馬鹿にしているとしか思えない。さらっと息子と言ったことには別の意味で驚いたけれど。
 正直に言うなら、骸はなんだかんだで自分がジョットのことを好いていることを自覚していたし、ジョットもそれに愛情をもって返してくれることも十分過ぎるくらいにわかっていたけれど、でもこれはないんじゃなかろうか。
 突然どこかからエプロンをとってきたと思ったら、いきなり『入学初日の挨拶の練習をするぞ!』などと。わけがわからないし、この自分を相手に正気の沙汰ではない。
 若干の悲哀も混じった視線の先で、ジョットは殴られた頬をさすりながらなんとか立ち上がる。問題はまずその服装だ。なぜやたらフリフリした白いエプロンを着ているのか。エプロンをつけて授業だなんてせいぜい5・6歳くらいまでだろうに。
「痛いでしょ、ムクロくん! 先生を殴るなんて、学級崩壊の前触れでーーー」
「黙りなさいっ」
「ぐぼぁっ!!」
 どごぉっ、と鈍い音と声と同時に、エプロン姿の小柄な男は再びぶっ飛んだ。
「どうしてそう馬鹿みたいなことばっかり一生懸命になるんですか! 大事なことと言うから何かと思えば…! 僕が学校なんて頼まれたって行くと思いますか!? もっと他に力を入れるべきことがあるでしょう!」
 確実に外まで聞こえてそうな大音量を叩きつけて、骸は盛大にため息をついた。
 たぶん廊下に待機している守衛達は、突然響いた子供の声ーーー骸が子供だと知らない人間は圧倒的多数だーーーに戸惑っているだろうが、そんなことなど気にしていられない。
 しかし、そんな骸にも怯まず、ジョットは悪い子を叱るような怖い顔で立ち上がり、腰に手をあてた。ようするに説教ポーズ。
「な、何ですかっ?」
 思わずたじろいで、骸はまたも後ずさる。そうしてしまってから、変な格好のジョットに気圧されたことにかすかに傷ついた。
「馬鹿みたいって何だ! こっちは大真面目だっての!」
「は、はぁ…」
 そのふざけてるとしか思えない格好で何を言うのか。骸は大いに戸惑ったが、ジョットの変な迫力のせいで反論はできなかった。
「いいか!! 学校ってのは子供時代の大事な大事な社会勉強の場であると同時に青春の代名詞とも言うべき戦場なんだ! 行きたくても行かれない子供がたくさん涙を飲んでいる中で、行けるやつが行かないなんて勿体ないとは思わないのか! 何より、今しか出来ない体験に素晴らしい友達! そう、友達は大事だ! 特に同世代の! そりゃあ家族も大事だしむしろ家族こそを大事にしてほしいけれども、友達ってのはまた別物なんだ! 共に泣き共に笑い時に殴り合い時に慰め合うのもまた一興! それこそ青春! 青春を謳歌せずして何が子供時代か!」
「………」
 何なんですか、これ。
 呆れを通り越して、何だかもう泣きたくなってきた。間近でこんな力一杯に捲し立てられて、一体どうしろと?
 大体、青春だとか口にするのも恥ずかしい単語を連発しないでほしい。
「とどのつまりはっーーー」
「待ってください! もういいですから、僕が悪かったですから、だからもうそれ以上恥態を晒さないで…!」



 ほんと、泣きそうです…。

















はい、ごめんなさい。でも、たぶん続きます…。