08.
「ごめん、骸!!」
不躾な音を響かせて食堂の扉が大きく開け放たれた。随分と急いだのだろう、息を切らせたその人は、骸の姿を見つけるや否やこの世の終わりのような悲惨な表情を浮かべて深く頭を下げた。
「遅れて、ごめん……!」
心底からの謝罪であることは、声に含まれた細かい震えから伝わってくる。今はもう深夜。日付の境界はとうに越え、陽光を好む生き物たちは寝静まっている頃だ。綱吉が交わした小さな約束は、大きく破られていた。
「ボ、ボス……」
席についたまま微動だにしない骸を中心に輪を描くように立っているファミリーたちは、気まずげに呻く。食堂にはたくさんの人間が集っていた。その多くは非戦闘員で、普段なら厨房に篭りっきりの料理人たちを始め、あくまで下働きに過ぎないメイドたち、日の入りと共に帰るはずの庭師たち、果ては人目を忍ぶのが常の情報屋までが揃っていた。彼らは皆一様に俯き、時折骸へと視線をやる。そこに宿るのは同情や悲哀だ。一方で、綱吉に向ける視線にはどこか咎めるような色が混じっていた。特にメイドたちのそれは露骨だった。
「ボス、どうして……っ」
ぽつりと、険しい声まで漏れる。本当は今すぐにでも綱吉を糾弾したいのだろう。言葉は無理矢理に途切れた。メイドはメイド、ボスである綱吉に意見するには足りないものがあるのだ。
ふぅ……、と深いため息。誰のものかはわからない。
「…………」
骸と同じテーブルについていたクロームがおもむろに立ち上がる。顔を上げない――いや、上げられない骸の頭を撫で、そっと慰めた。犬と千種も続き、もはや綱吉の存在などないものとしていた。お前などいらない、とそれぞれの背中が語っていた。ランチアだけは綱吉を一瞥して軽く首を振って見せたが、それもまたプラスの意味ではないだろう。
だが、その輪からいくらか離れた机では、酒を片手に一杯やっていたらしい男たちが陽気に手を振っていた。
「ボスー、お疲れ様でさぁ! こっち来て飲みませんかぁ!」
がははは、という豪快な笑い声は、完全に出来上がっている証拠だ。まったくもって場違いで、同時に、マフィアとしては珍しくない姿だった。これこそ今のボンゴレ・ファミリーの縮図と言っていいだろう。骸を愛する者たちと愛さない者たちとに分かれ、対立する。それは水面下にありながら、しばしば浮上する問題だった。
「後にしろ、馬鹿!」
早口に言ったのは、綱吉の後についていた獄寺だった。骸に対しどんな小さな想いでもいい、愛情に類する何かを感じている者ならば、誰もが同じことを考えただろう。獄寺を含め、守護者は皆、それぞれの形で骸を認めていた。だが他はそうはいかない。獄寺の注意を受けた男たちは不満げにジョッキを揺らし、ぐいと呷る。
しかし綱吉の目は骸以外を映していなかった。どこか茫然としながら骸の方へゆるゆると歩み寄る。
「…………」
かたん。
綱吉が近付くや否や、骸は静かに立ち上がった。顔は未だ下を向く。視界に入っているだろうテーブルには、席に着いていた人数より一人分多い、六人分の皿が乗っていた。湯気など遥か昔に忘れてしまったカルボナーラ・スパゲッティだ。どれも手つかずの状態のままで固まってしまっている。その意味に綱吉が気付けたなら、展開は変わっていたのだろう。
「骸、俺……」
骸にしか意識が行っていない様子で、綱吉は更に歩み寄る。ファミリーたちは十戒か何かのように道を開け、じっとそれを見つめる。犬と千種は骸を庇うように一歩前に出ていた。
「寄るな。てめぇ、何しに来た」
「今何時だと思ってる」
一気に場の空気が冷える。出来上がった男たちですら静まった。誰も口を挟める空気ではない。
「ごめん、本当に……」
「謝るだけなら、誰だって出来るびょん」
「約束をしたなら守れ。守れないなら約束なんてするな。骸様が傷付くだけだ」
犬と千種に辛辣な言葉を吐かれても、綱吉は反論出来なかった。
「すまない……」
搾り出すように呻くが、やはり骸は俯いたまま微動だにしない。綱吉は堪らなくなって手を伸ばした。
「骸、あの、俺な――」
「……ッ」
綱吉の手が骸の肩に触れようとした瞬間、骸の手が冷え切ったカルボナーラ・スパゲッティの皿を鷲掴む。
「――!!」
べちゃっ。
「十代目!」
思いきりよく突き出されたそれは、見事に綱吉の顔面に直撃していた。どうすることも出来なかった獄寺は、声音は慌てていたものの前に出ることはない。それが許される状況ではないのだ。綱吉とて、避けられるものを避けなかったのだから。
ソースを綱吉の顔に残して落ちた皿は、素材の特性か割れはしなかった。円を描くような動きでぐわんぐわんぐわんとけたたましい音をたて、倒れるだけ。その余韻もやがて消え、嫌な静寂が訪れた。思考が追い付かない綱吉は、ただただ呻くしかなかった。
「む、骸……っ!」
ひどい顔にされたにも関わらず、綱吉は縋るような表情だ。
「…………」
それを冷たく見つめる骸は、徐々に瞳を潤ませ、ひくひくと口角を痙攣させ始めた。無表情だった顔は歪み、今にも泣き叫びそうだ。けれど涙を見せるのは嫌なのか、瞬きを抑えて必死に堪えているのがわかる。
綱吉は焦燥感に刈られるままに口を開いた。
「ごめん! 本当に、ごめん。お前が怒るのは当然だ。約束守れなくて、悪かった……」
綱吉は必死に言い募る。
言い訳なら、たくさんあった。出立してから会議場の変更があったこと、予定外に会議が長引いたこと、山奥の会議場には連絡手段が乏しかったこと、そして――道中なんとかボンゴレ支部に連絡をとっても、骸まで伝言が伝わらなかったこと。電話口で、古くからボンゴレを支えてきたファミリーは言ったのだ。骸は電話に出ても意味がない、私が用件をお伝えします、と。この時、綱吉の考えがボンゴレ内部の情勢に至っていればこうはならなかったのだろう。伝言は、骸に伝わることはなかった。
今こうなった理由はたくさんある。けれどそんな言い訳など、骸本人にとっては何の足しにもならないことだ。ならば、綱吉に残された手段は限られてしまう。
「あ、明日こそは、ちゃんと、間に合うようにするから……! だから骸、また、俺とさ――」
「っ、……っ!!」
骸は音がするほどに歯を食いしばり、激しく首を振った。眉根を限界まで寄せた顔は、おやつを頬張り綻ばせたものとは似ても似つかない。きつく睨んでくる瞳が悲しくて、綱吉はなんとかしなければと言葉を探す。
「そ、そうだ、明日な、白蘭が遊びに来るって。あいつ、食べ歩きとかしてるからさ、おいしいお店を聞いてみよう? そ、それでさ、明日はとびっきりのディナーを――」
その時だった。
骸の動きは素早かった。今度は避けないのではない、避けられない、だ。骸の手はテーブルに転がっていたフォークを無造作に掴み、走馬灯のような素早さと不気味さで突き出していた。
「ボス!!」
数人が叫んで懐に手を入れる。誰もが間に合わないと思った。
――けれど、フォークの切っ先は綱吉の喉の数ミリ前でぴたりと静止していた。
「む、く……」
息を、呑む。
所詮フォークだ、ナイフではない。けれどそこに篭められた怨嗟は、紛れも無く本物だった。
誰も、動くことは出来ない。
「――この、ガキが……!」
止まったかのように思えた時が突如動き出す。酔っていたはずの男たちが瞬時に懐から銃を取り出したのだ。そこに酔いの気配はない。日頃溜め込んでいた骸に対する苛立ちが、風船のように膨らみ続けた反感が、今この瞬間に弾けたのだ。
「お前のどこが六道骸だ! 守護者の代わりにもなれないお荷物ごときが、何をしても許されると思うな!!」
引き金にかかった指が、悪意を持って動く。
「よせ!!」
フォークが首の皮を抉ったが、綱吉は構わず骸を抱き寄せた。
「撃つな! 駄目だ、撃つな! 俺は大丈夫だから、頼む、お願いだ……! 骸を撃たないで……!」
「しかし、ボス……!」
「頼む!!」
ぐ、と更に骸を抱き寄せ、密着する。綱吉の腕の中、骸は呼吸を荒げて抵抗していた。声が出せたなら喚き散らしていてもおかしくない。それくらいに嫌がっていた。けれど、綱吉には骸を閉じ込めるという手段以外思い浮かばなかった。今度こそ失ってたまるものかと骸を強く抱き、呻く。綱吉はただ必死なのだ。
「俺は、お前たちがどれだけ忠義深いか、よくわかっているよ。だから、銃をしまってほしい。……お願いだ」
「……わかりました」
渋々といった様子は隠し切れなかったが、男たちは銃をしまう。視線だけは骸を射抜いて。
少なくとも骸の生命の危険は免れたが、その場の空気は未だ張り詰めていた。
「……クロームたちも、どうか武器を収めてほしい。彼らにはもう、害意はない」
綱吉はクロームたちに目を向けた。クロームは槍を、犬は鋭い牙を、千種は毒針をしこんだヨーヨーを。それぞれに殺気めいた怒気を撒き散らし、一瞬のうちに獲物を狩れる体勢になっている。
「ふっざけんなクソ野郎!!」
「今すぐ骸様を放せ……っ」
千種ですら語気が荒い。犬に至っては髪を逆立て、ヒトから幾分か遠ざかった姿だ。とても話が通じるようには思えなかった。
「クローム、二人を止めてくれ」
「……悪いけど、私も同じ気持ち」
まだ理性を感じさせるクロームに救いを求めるも、断じる声は思いの外鋭かった。
「今すぐ骸様を放して。嫌がってるわ」
「クローム、俺は――」
「今は骸様の話をしてるの! 骸様を放してあげて。これ以上傷付けないで。悲しませないで! 期待を持たせないで! 裏切らないで! それが出来ないなら、ボスには骸様の隣に立つ資格なんてないわ!」
ぶん、と感情のままに槍が薙ぎ払われる。人の集った食堂だ、何人かは数歩下がってひやりとしたし、いくつかの椅子の背は斬り飛ばされた。クロームがこんなにも怒る様を見たことがなかったファミリーは、一度二度と唾液を飲み込み密かに震えた。
「…………ごめん」
反論など、出来るはずもない。綱吉は腕の力をゆっくりと緩めた。
「っ……!」
途端、骸は綱吉に拒絶の背を向けた。僅かな距離を駆け、悲しげに目を臥せるランチアに縋りつく。綱吉との間にはクロームたち三人が立ち塞がり、綱吉と骸とを完全に分断した。
「……骸、落ち着け。ゆっくり、鼻で息をしろ」
凍えたように小刻みに肩を揺らす骸の背を、ランチアの大きな手が優しく摩る。骸は過呼吸寸前だった。引き攣ったような呼吸音は痛々しく、ランチアはぎゅっと骸を抱き寄せた。
「もう大丈夫だ。安心しろ。さあ、ゆっくり吸って、ゆっくり吐け。慌てるな。俺に合わせて呼吸しろ」
骸の耳元に口を寄せ、ランチアは骸に自身の呼吸を聞かせる。ランチアの腰にぴったりと張り付いた骸には、きっとランチアの力強い心音も聞こえているだろう。
「……っ、……、……」
骸の様子は目に見えて落ち着き始めた。しかし身体の危機は去っても、心の動揺は収まらなかった。
「……っ、……!」
ひくひくと鼻が膨らみ、肩は揺れ、足は震え出す。鳴咽が聞こえるのも時間の問題だろう。今にも崩れ落ちてしまいそうなその身体を、ランチアはおもむろに抱え上げた。
「今日はうちに来い、骸」
当たり前のように出た提案に、綱吉は目を剥いた。
「ランチアさん!?」
そんな、と思わず手を伸ばすが、綱吉と骸との間にはクロームたちがいる。近くとも遠い距離。手が届くはずもなかった。
ランチアはあえて綱吉を意識から外し、大人しく腕に収まっている骸の頬を軽く撫でる。
「お前がいると、近所の御夫人方がとても喜んでなぁ。孫のようだと評判だよ。お前が良ければ、店を手伝ってくれると助かる」
「っ……?」
「妙な心配をするな。お前は真面目だし、働き者だ。邪魔になんてなるはずもないさ。自信を持て、骸」
赤子をあやすような声は、いつにも増して優しい。骸は安心しきった微笑を見せ、ランチアの胸に静かに顔を埋めた。春風のような、暖かな空気が二人を包んでいた。父子の関係はもはや疑いようもない。――綱吉は自分でもどうしようもない感情の波に呑まれて瞳を潤ませていた。
「ランチアさん……っ」
その弱々しい表情は、ファミリーの皆をぎょっとさせるには十分だ。先程骸に銃を向けた男たちなど、絶句している。それでも綱吉には自分を制御することが出来なかった。骸の居場所は自分の元であってほしい、いや、そうでないと意味がないのだ。骸と離れるなど、綱吉にとっては突然突き付けられた悲劇のようなものだった。決して受け入れられはしない。
「お願いです、骸を連れて行かないでください……! そんなの、嫌だ……っ」
「すまないが……、骸の気持ちが落ち着くまでは、傍にいさせるわけにはいかない」
「そんな……! 今回のことは本当に悪いことをしたと思っています。さっきのことも、怖がらせて悪かったと……。でも、出ていくなんて……!」
「今回はタイミングが悪かったんだ、ボンゴレ。……少しの間でいい、距離を置け」
「でもっ――」
ぱんっ。
縋るように伸ばした手は、割り込んで来た手によって強く払われた。
「黙れウサギ! 自分勝手な反論はうんざりびょん!!」犬は目を血走らせ、綱吉を睨めつけた。
「さすがに呆れ果てた」
並ぶ千種は構えた武器を軽く振るい、言葉より行動を選ぼうとしている。またしても一触即発の危機だが、綱吉の言葉に縛られたファミリーは動くに動けないでいた。
「ボス……!」
じりじりとした緊張が満ちる。
「犬、千種」
低い声が二人を呼ぶ。咎めるようなものではない、単なる呼びかけに近い響きだ。
反射的に振り返って、途端二人は毒気を抜かれたように目元を緩ませる。
「――静かに」
ランチアの腕の中、骸の胸は規則的に動き、ゆったりとした夢の中に落ちていた。
犬と千種は何もかも忘れたように背を向け、音を立てないよう注意して骸の顔を覗き込む。場の空気は一転していた。
「骸しゃん、疲れちゃったびょーん……?」
「頑張ってらしたからな……」
口元をほころばせて、二人は小さく小さく囁く。その声はこそばゆい程に柔らかかった。
「――ボス」
「!」
何も言えずにいる綱吉に、クロームは無表情に告げる。
「私たち、しばらく休みをもらうわ。骸様の傍にいたいの」
「……っ」
綱吉は俯き、奥歯を噛み締める。骸と離れることが怖かった。自分以外の誰かが骸の心に触れることが怖かった。骸に必要とされなくなってしまうことが怖かった。もしそうなってしまったら、もう絶望しか残らない。七年前、綱吉は失うことの恐ろしさを知ったのだ。そして一年前、恐怖に駆られた綱吉は歪んだ再会の果てに過ちを犯した。積み重なる心の負荷は、綱吉を臆病に変えていた。
「ま、待って……! 明日は、明日こそは、ちゃんと約束守るから! 今度は絶対だよ。明日はお昼も一緒に食べられるよ! かくれんぼにもたくさん付き合えるし、いつもより長く一緒に居られるから!! 骸を傷付けたりしないし、うまく愛せるように努力するから、だから……、だからっ、俺から骸を奪わないで!!」
まるで駄々っ子のようだった。その悲痛な叫びが届いたのか否か、骸が微かに身じろぐ。けれど目覚めることはなかった。逆にファミリーの一部は激しく動揺していた。
「……ボンゴレ」
ランチアは静かに呼びかける。
「厨房の冷蔵庫に、ホールのタルトが冷やしてあるんだ。チョコレートは切らしてしまったからシンプルなレモンタルトになってしまったが、これがなかなか上出来でな」
「……?」
突然何を言い出すんだと、綱吉は軽く錯乱してしまう。そんなこと、今は関係ないだろうと。けれどクロームたちが口を挟む気配はない。ランチアはもちろん、皆真剣な表情だった。反応出来ない綱吉を置いて、ランチアは続ける。
「夜食にでも食べてくれないか。それで、骸が落ち着いた頃に、一言でいい、感想を言ってやってほしい」
「骸……?」
ぴくりと綱吉は肩を揺らす。良いとも悪いともいえない予感が体内を吹き荒れていた。
「そのカルボナーラは、実を言うとあまり上手くいかなかったんだ。ゆっくり気持ちを篭めて混ぜたのがいけなかったんだろうな。ソースに火が通り過ぎて固まってしまった。麺に絡まないし、食感も悪い。骸自身、納得していなかったんだ」
ランチアの手が骸の頬を撫でる。綱吉の中で一本の糸が繋がった。
「――これ、まさか……!」
骸が何故、あれほどまでに傷付いたのか。何故、離れようとするのか。ああそうだったのか、なんて緩やかな納得ではない。どうしてこんな大事な時に約束を守れなかったんだと、激しい断罪の声が頭の中に響いていた。
「骸は、お前が思っているほどお前を嫌っていないさ。ちょっと愛情表現が捻くれているのは確かだが。それに、約束を破られることを極端に嫌うようでな。だからこそ、今回は、運がなかった」
「……!」
「距離を置け、ボンゴレ。今は、お前の傍にいるのは辛いだろう。骸を苦しませないでやってくれ」
ランチアの言葉は真摯で、曇りがない。
「……わかり、ました」
燻っていた何かがすっと消え、綱吉は素直に頷いていた。
「タルト、大事に食べます。骸が起きたら、ありがとうと伝えてください」
「ああ」
「あ、あの! 骸に、手紙を書くことを……許してくれますか」
せめて、と出された提案に、ランチアは微笑を返した。
「書きたいなら、好きなだけ書けばいい。俺の許可などいらんさ。読むか読まないかは、骸が決めることだ」
「は、はい……! あの、ランチアさん、」
綱吉は深く頭を下げた。
「――骸を、よろしくお願いします」
「……ああ」
同盟ファミリーでもなく、むしろ元は罪人であるランチアに頭を垂れる綱吉の姿は、ファミリーの目にはどう映ったのか。料理人たちやメイドたちはほっと胸を撫で下ろし、懐に銃を抱えた男たちは眉間を激しく皺寄せる。獄寺はその温度差を肌で感じ、安定を欠くボンゴレ・ファミリーの先行きを案じざるを得ない。
「……十代目……」
綱吉にちらりと視線をやって、獄寺は不安を散らすように小さく首を振った。誰も気付くことはなかった。
「さて、帰るかな」
ランチアはさらりと言って、骸を抱えたまま歩き出す。
「ほら犬、唸ってる暇があったら骸の着替えでもとってこい。千種も、いつまでも睨んでないで、表に車持ってくるぐらいの気を利かせないか。クロームはいつもの毛布を持って来てくれ。その方が骸は落ち着くだろう。さあ、動いた動いた!」
通り掛かりに一気に指示を出せば、険悪な雰囲気だった三人はころりと表情を変える。
「らじゃー!」「わかった」「うん」
呆気なく食堂を飛び出して、三人はそれぞれの方向に散った。
「邪魔したな、ボンゴレ。――あまり気を落とすなよ」
ランチアも三人に続き、ゆっくりと去っていった。
しっかりと、その腕に骸を抱きかかえて。
骸さんが約束にこだわる理由を語らないと、この時点ではやりたい放題の子供になっちゃいますねー……。
とはいえ、骸さんの事情について書けるのがまだまだ先というこの悲しさ。
とりあえず、骸さんには骸さんの理由がある、とだけ心に留めておいてくださるとありがたいです。
え、王道展開? フハハハ、管理人の好みの問題さ!!←
次回、白蘭のターン!
フラグの回収が早過ぎるとか、気のせいです。
2010.1.17
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