ムクツナムック















!注意!
学園パラレルものです。


























「ツナあぶねーぞっ!」
「ふぇ?」

 どごっ
「ぐべっ!!」

「大丈夫かツナっ! おーい! おいっ、ツナ! ツナ――」

 真正面からのボールすら避けられない自分に呆れながら、綱吉の意識は急激に遠退いていった。

















「……んむ……む?」
「あ、起きました?」
 目を開ければ、赤と青の3Dメガネかとツッコミたくなる特徴的な瞳が鼻先数センチのところにあった。
 そして眼があるなら当然顔があって身体があって――
「うっ……うぼぇぇぇぇぇええええっ!!??」
 奇怪な叫びを上げて、跳ぶ勢いで後ずさる。

 ずるっ

「え――」
 しかし後ずさった先には何もなかった。一瞬ふわりと浮いて、その次には当然落ちる。

 どさっ

「だっ……!!」
 後ずさる時に変な体勢だったことに気付くべきだった。綱吉はベッドに寝た体勢のまましゃかしゃかと本能的に動き、その結果ベッドから落ちたのだった。
 そう、ベッド。そして嫌と言うほどに見覚えのある男。なんで男の自分が男と同衾しなくちゃならないのか。
「う〜だぁぁぁ!」
 とにもかくにも腰をしたたかに打ち付けてもんどりうつ。問答無用に存在を主張する冷たく硬いタイルが恨めしかった。それでも身体はごろごろ転がって壁に辿り着く。というか、本当はもっとベッド及び彼から離れたいのに、壁があってこれ以上離れられなかっただけなのだが。
 学校にベッドがある場所なんてひとつしかない。ここは保健室だ。
 とどのつまり、最悪だ。
 そしてそんな綱吉の様子をベッドの上から楽しそうに覗き込むのは――

「ろっ、六道せんせ――」

 ずぎゃっ!

 い、までは言えなかった。接近を感知する間もないまま変な形の剣(?)が綱吉の顔のすぐ右横に突き立てられて、それでも喋り続けることが出来る猛者を綱吉は数えるほどしか知らない。悲しいかな、周りには人外が集っているのでゼロではないわけだが。その人外の最たるものの一人が、今目の前にいる――

「骸先生、でしょう? 綱吉くん」

 至近距離に浮かぶ胡散臭い微笑を貼付けたその顔は、どこぞの絵画などより余程整っていた。その美貌を幻想的に飾る宝石のような2色の瞳、鳥肌が立つようなしっとりとした美声、とどめにイタリア育ちゆえの紳士ぶりで、女子生徒はもちろん女性教諭にも用務員のおばさんにまでも大人気の保健医、六道骸先生だ。あくまで異性からだけで、男子からはその特徴的な髪型から陰で『ナッポー』などと呼ばれているが。
 ……命知らずもいいところだと思う。いつの間にか転校している生徒がちらほらいることに、いい加減気づいてほしい。
 どちらにしろ外ヅラの話であって、内面――もとい本性を知っている身としては、優しく女の子の治療をしている光景ですら目に痛い。あれはやめてほしい。いや、やめたらやめたで本性を出されても困るけれども。

(っていうか、どうして俺にだけ素なんだよっ)

 うんざりしつつ、『ツナのツはツッコミのツです』なツッコミ属性の綱吉は脳内でツッコんだ。このテのツッコミは口に出すと後が面倒だから言えないが。どうせ『愛しているから』だの『君にだけは僕の真実の姿を知っていてほしい』だのなんだのと聞くに耐えない台詞が返って来るのはわかりきっていた。
 だからそこらへんには触れず、もうちょっと具体的なところをツッコもう。
「保健医が武器出さないで下さい骸先生!!」
「武器? 違いますよ、オシャレなメスです」
「3連のメスなんてあるかっ!! 大体保健医にメスはいらないでしょう!!」
「おやおや、知らないんですか? 最近の保健医は手術も出来なきゃなれないんですよ?」
「え、マジ?」
「嘘に決まってるでしょ、おバカな綱吉くん。そんなところも可愛いですけどね」
 ――と、こんな具合だ。骸先生の思い通り、まさに玩具なかんじに弄ばれている。しかもやっぱり最後にはそういう台詞が来るあたり、どうしようもない。

「ま、そういうことなので」

 何が『そういうこと』なのかわからないが、骸はその長い指を綱吉の顎に添えてきた。無駄に色っぽく、妙に様になっているのがどうにも気になる。

(げ。ちょ、やば……!!)

 経験上その次にどんな事態が待っているのか容易にわかって、綱吉の背中を冷や汗が流れた。とは言っても、背中はぴったり白い壁に張り付いているのでワイシャツに染み込んで終わりだった。
 そして何より逃げ場がないわけで。
「担任の先生には午後の授業は休むと伝えてありますから、安心して下さいね」
「何がぁぁぁっ!? どこがぁぁぁっ!?」
 綱吉の半狂乱のツッコミをよそに、骸先生はその形のいい指で綱吉の顎を固定し、もう片方の手で綱吉のネクタイを外し始めた。しかも両手で全く別のことをしながら、今度は端麗な顔がゆっくりと近付いてくる。熱っぽく強い視線が綱吉を縫い付けているので目をそらすことすらできない。
 同時にいろんなことをできるなんて器用ですよねーあははは、なんて言ってられなかった。
 これは本気でヤバイ。

(ひぃぃぃっ!! え、えまーじぇんしー! えまーじぇんしーっ! え、えいせいへい衛生兵っ!! ただちにこの変態を治してやって下さいぃぃぃぃぃ!!)

 なんかもういろいろついていけなくて、綱吉はパニック状態だ。手足をつっばって跳ね退けようとしても、いかんせん小柄な綱吉と大人で長身の骸とでは体格差がありすぎた。そんな状態なので、あちらは綱吉の些細(綱吉的には精一杯)な抵抗をむしろ楽しんでいるらしく、クフクフと上機嫌だ。こっちの機嫌はバンジージャンプ中ですが。

(マジ、駄目! ホント無理だから! っていうか何してんの保健医!? こちとら生徒だぞ!? バックにはPTAが付いてるんだそ!? そして何より男だぞ!? なんでワイシャツまで脱がすワケ!? 男の胸見て何が楽しいのか50字以内で述べよっ!!)

 やばいやばいと混乱しつつ慌てている間に、お互いの影が落ちるくらいの距離にまで顔が迫っていた。
「うっ、うぅ……うぅぅぅうっ!」
(〜〜〜〜背に腹は代えられない!)
 もう限界突破だ。
 後先のことなんて考えてられないとばかりに、綱吉は大きく息を吸い込んだ。

 すぅっ

「助けて!! 樺根せんぱ――」

 ずごがっ!!

「いぃぃぃぃぃぃぃいいい!!??」
「ちっ」
 綱吉の顔のすぐ左横から3連メスだかなんだかの2本目が突然生えた。それは骸先生の頬を掠めかけたものの、骸先生は無駄にいい反射神経を発揮してしっかり避けていた。
(……そんなことより、コンクリ貫いてるんですけど!?)
 綱吉は現実味のない光景――顔の左右に同じ物がブッ刺さっている――に恐怖を通り越して呆れ返った。コンクリートだよ、コンクリート。砂糖菓子か何かじゃないんだから、そんな当然のように貫かないでほしい。一言で言うなら、なんじゃこりゃ、な気分だ。

「骸、でしょう? 綱吉くん」

 そして更になんじゃこりゃ、な事態がコレだ。

「……骸……さん」

 現れたのは、見た目骸先生を少し幼くしただけの、同一人物と言っても過言じゃない少年――樺根骸だった。本名は骸先生と同じ六道骸らしいのだが、そこらへんはいろいろ複雑らしい。現在の状況こそ綱吉にとっては複雑だが。
「まあいいでしょう。お利口さんですね、僕の綱吉くんは」
 そのやたらと色っぽい微笑はやはり骸先生そのままで、トチ狂ったんじゃないかと疑う台詞までそっくりだ。
 彼ももちろん女性陣には大人気で、当然ながら裏で男子には『ナッポー2号』だとかセンスのかけらもない呼ばれ方をしている。ちなみに過去たまたま本人にバレたことがあったが、その時は『ナッポー』よりむしろ『2号』というくだりにお冠だった。お冠過ぎて警察沙汰――いや、警察の弱みを握っているらしく警察は口出しなんてできないが、救急車が数台来るほどの事態にはなった。それでも物足りなかったらしく、救急車の1台を盛大に串刺しにしていたくらいだ。
 要するに、外見も内面もそっくりなこの二人だが――

「おやおや、これだから最近の若い子は。独占欲丸出しで乳臭いったらありゃしない」
「同じツラしてジジくさいこと言わないでくれます? 僕まで年くったみたいで不愉快なんですけど」

 こういう仲だった。
 見えない火花が散っているが、二人の間にいる綱吉が一方的に被害を被っているのがなんともつらい。彼らの綺麗な眼は凄むとめちゃくちゃ怖いのだ。本性が冷酷・凶悪・容赦なしの三拍子なので、その恐怖は本能に訴えてくるタイプのものである。抗いようがない。
「い、いやあの、ごめん、お願いだから俺のいないところでケンカし――」

 ずぼっ
 ずぼっ

「――どぅぇぇぇ!?」

 同時に左右に突き立っていた剣だかメスだかがそれぞれによって同時に引っこ抜かれた。その際綱吉の髪をいくつか切断していったのはご愛嬌だ。
 そして直ぐさま同じ顔の二人は同じ距離を同じタイミングで跳び退る。
 片方はベッドの上に、もう片方はテーブルの上に立った。高いところが好きなところまでそっくりだ。馬鹿と煙と骸と骸は高いところがお好きらしい。

「そんな物騒なものを構えてどうする気です? まさか教師に刃を向ける気じゃないでしょうねぇ」

「生徒会長権限で変態セクハラ教師に制裁を加えるだけですよ」

「ひどい言いようですが、合意の上での行為はセクハラには該当しませんから。ね、綱吉くん」

(いつ、誰が、どこで合意したっ!?)

「合意? ふざけたことを。彼は僕のものだ」

(誰が、誰のものだって!?)

「は、またそれですか。妄想が許されるのはガキの特権ですよね」

(あんたも妄想ばっかりだ!!)

「よく言う。11も年下の子供にお熱なのはどこのどなたですかねぇ」

(お熱って言わないでぇぇぇ!! リアルで余計にキモいから!!)

「気持ち悪い言い方やめてくれます? その言い方だとまるで僕があなたを好いてるみたいで首つりたくなるんですけど」

(確かに聞きようによってはそう聞こえるよっ!!)

「年とると耳が遠くなるんですかねぇ。11って言ったでしょ。あなたと違って僕は綱吉くんの先輩ですからね。あなたよりもずっと綱吉くんに近しいのをお忘れなく。首つるんだったらそこらの桜でどうぞ。始終咬み殺すとか言ってる人に邪魔されずに済みますよ」

(ああそう言えば骸さん15歳で骸先生は25歳だったっけ。って、だからどうした!! あとあそこの桜は気に入ってるんだから別のにして!!)

「みみっちいことを気にするのはお子ちゃまの証拠ですよ。そんなんで綱吉くんが振り向いてくれるはずないでしょう。あとあの鳥の話をするのはやめなさい」

「ああ、やだやだ。ひがみですか? 見苦しいったらないですよ。あと僕もあの鳥の話がしたかったわけじゃありません」

「……」

「……」

「「とにかく、綱吉くんは僕のですから!」」

 キッとこちらを同時に振り向いて、二人はそれぞれの武器にどこからともなく取り出した長い棒を取り付けた。
 あぁ…救急車で串団子作れる槍のご登場ですか。
 若干無我の境地に陥りながら、綱吉は遠い目をした。本気でやりはじめたら周りなんて目に入らない彼らのことだ、こんな狭いところすぐにズタズタになる。もちろん不本意ながら戦場まっただなかにいる綱吉もご一緒にズタズタだ。別に心中したいほど保健室に愛着なんてないというのに。
 そう思うと、ふつふつと心の奥から理不尽な事態への怒りが沸き上がって来た。
 そもそもこいつらさえいなければこんなことには――

「「あなたさえいなければ、綱吉くんは僕だけのものです! さっさと消えなさい!!」」

 ぶつんっ

「お前らが消え失せろぉぉぉぉぉぉっ!!」

 怒りが頂点に達し、綱吉の額に死ぬ気の炎が宿る。

「死ぬ気で骸たちをぶっとばす!!」





























「で、どうしてこうなったわけ」
 
「え、えーと、その……あ、あははははは」

「……咬み殺す」

「ま、待って! ひっ、ひぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」












 この時、傷だらけになりつつも綱吉を庇った同じ顔の二人に、ちょっとだけ、ほんのわずかにだけ時めいてしまったのは、誰にも言えない。 
 

















『tetrapot』のあさき様への相互リンクお礼です。
ちなみにあさき様の素敵リクは、「25骸×14ツナ×15生徒会長骸で学園パラレルで争奪戦」とのことでした!
ワォ! すんばらしいリク内容なのに全く活かされてないという…! 申し訳ない…。
綱吉にツッコまれますね、これじゃ…。ついでにひとつ補足を。ウィキってみたら保健医なんて日本語はないらしいです。正式には養護教諭だとかなんとか。でも雰囲気が伝わりやすいのは保健医の方だと思うので、日本語的には間違っておりますが使いました。
ちなみに最後綱吉がちょこっとデレたのは、いくらなんでも糖分が少な過ぎたためです。うん、無駄なあがきでしたね(泣)

せっかくの悶え設定を活かしきれず申し訳ありません、あさき様。こんなんしか書けない管理人ですが、今後ともよろしくお願いいたします。

2008.5.14.