10.ロシアンルーレット
「――で?」
「だーかーら、ロシアンルーレット!」
場面は骸の部屋。
謹慎5日目で相変わらず暇を持て余していた骸の元にジョットがやって来たのは、3時のおやつ時だ。いつものように鍵を全くもって無視し、いつかの光景とダブるカートをあちこちにぶつけながら部屋に入って来た。だが、並べられたものはいつかのような料理の数々ではなかった。
規則的に並ぶそれは、うす茶色のふわふわぱりぱりした、小さなシュークリーム――が、なぜか20個。
「ロシアンルーレットって、リボルバー式の拳銃でする気のふれた遊びじゃありませんでしたっけ?」
ロシアンルーレットとは、リボルバーに弾丸を1発だけこめ、自分と相手が交互に自らのこめかみに銃を当てて引き金を引く。もちろん死んだ方の負けという、単純だが生死を賭けたゲームだったはずだ。
骸からすれば、殺すのが目的なら素直に撃ち殺した方が遥かに早いし、敢えて自分の身を危険に晒す必要性を感じない。つまり、全く理解できない所業だった。
「そんな怖いこと誰がするかよ! そうじゃなくて、もっと平和な『ドキっ! わくっ!? シュークリームロシアンルーレット』!」
(ひ、ひどいネーミングですね……)
うきうきしたジョットに白い目を向けながら、骸はどうしてこんなのがマフィアのボスなどやっているのか、そしてできてしまっているのかと嘆いた。こんなことなら、まだ普通のロシアンルーレットの方がまともに思える。
「そっ、そんな目で見るなよっ。いーじゃん、面白そーだろ!? 暇つぶしになるだろ!?」
謹慎を申し付けた本人に暇つぶしを提案されるとは、と骸はため息をついた。だったら最初から謹慎など命じなければいいだけのこと。骸としても、その方がずっとありがたかい。
「……あなたの仕事はどうしました」
「ふんっ、どっかの妖精さんが片付けてくれたから、今日はもうありませんよっ」
妖精さんこと骸は、余計なことをするんじゃなかったと少し後悔した。そしてふと、今日は暇だと言うなら、どうして今更ここへ来たのだろうかという疑問が浮かび上がった。彼の性格及び今までのことを考えれば、朝っぱらからこの部屋に侵入してくるのが残念ながら普通だろう。
「ひょっとして、このシュークリーム――」
「うん、俺が作った!」
骸の言葉の先を読んで、ジョットはどこか誇らしげに胸を張った。
「俺が作ったものならおいしく感じるんだろ?」
なぜかは骸本人にもわからないが、事実だった。他の誰が作っても素材の味がするとしか思えないが、ジョットが作ったものだけは、そういう領域とは別の部分でおいしさを感じるのだ。
「……っ……暇人」
ぼそりと自分にも当て嵌まる単語を口にして、骸は拗ねたようにそっぽを向いた。ジョット以外にこんな表情を向けることなどないし、実際のところ、骸がこんなに感情をあらわにしているところを他の誰かが見たら、卒倒するか怯えるかだろう。とりあえず嵐と雷の両名は確実に後者だ。
そんな骸をジョットが嬉しそうに見つめていることにも気付かないまま、骸は口を開いた。
「――で、ルールとか説明はないんですか?」
なんだかんだでやる気になってくれている。そういうところが妙にかわいいんだよな〜、なんて口に出したら刺されそうだが。
「シュークリーム20個の中に、1個だけハズレがあるんだ。シュークリームの中身は全部違うものだけど、ハズレはすぐわかる食材だから安心さ」
(何が安心なのか理解できませんよ)
心の中でツッコミを入れつつ、それぞれ中身が違うらしいシュークリームの群れを見つめる。外見上は、大した差はなかった。形が不揃いなのはご愛嬌、と言ったところか。
「それで、ハズレを引いた方が負け、ということですか」
「その通り!」
「で? 負けた方は何をするんです?」
その言葉に、ジョットの脳裏に先日の一件が浮かんだ。昨日の今日でぴんぴんしている自分も大概だが、雷も持ち前のタフさを発揮して今日にはもう立ち直っていた。しかしそれは肉体的な面での話であって、精神的痛手――骸の罰ゲームに対するトラウマは未だ燻っている。
「お前の罰ゲームは遊びじゃすまないからなぁ。もっとこう、楽しく平和に!」
「僕は平和で楽しめましたけど?」
「……みんなで楽しく平和に!」
「それじゃ意味ないじゃないですか」
確かに負けた方も平和に楽しめれば、罰になどならない。
「い・い・の! 俺が勝ったら……うん、骸の手料理が食べたいなぁ」
「はぁ?」
「よし、決定!!」
「ちょっと待ってくださいよ!」
「で、俺がもし万が一負けるようなことがあったら、まぁ有り得ないけど、骸の謹慎期間を一週間に縮めてやるよ」
骸の反論をさらりと無視して、ジョットは妙に自信ありげに提案した。
(……何か、いろいろおかしいような……。大体、もし万が一? 有り得ない? この人がこんなに自信満々だなんて……)
「まさか、シュークリームに細工してるんじゃ――」
「ひっどいなぁ。そんな卑怯なことはしないよ。ただ直感でどれがハズレかわかるだけ」
「余計にたちが悪いですよっ!」
ジョットの直感はほとんど百発百中だ。そこに小細工などないからこそ、骸には全くもって予想がつかない。
結局のところ、この勝負自体に意味はないのだろう。面と向かってただ骸の手料理を食べたいと言ったところで骸が首を縦に振らないのは決まりきっているから、こんな回りくどい方法をとっただけ。しかもジョットがわざわざ骸のためにシュークリームを作り――料理なんてまるでできないジョットのことだ、朝から掛かり切りで作ったのだろう――なおかつ勝負として挑んで来られたら、骸が断れるはずがない。それをわかった上でのことだ。うん、十分卑怯だ。
「まったく、あなたと言う人は!」
「まあまあ。どうせ暇だったろ? たまにはいーじゃん。ほら、骸からどうぞ」
悪びれた色もなくシュークリームを勧めるジョットに、骸は一瞬殺意を覚えた。
「お! くぅ〜〜〜! シュークリームに青のりは合わなかったか……」
口の中を青のりでいっぱいにしながら、ジョットは眉を歪めた。
「どう考えたって合わないでしょう、それは……。大体、シュークリームに青のりって段階で僕にはハズレとしか思えないんですけど」
今まで食べたシュークリームの中身は、カスタードクリーム、チーズ、チョコレート、ミートソース、トマトソース、アロエ、丸めた刺身、大根おろし、刻んだ焼肉、青のりである。まだ半分だというのに、すでに混沌とした中身だらけだった。初めて食べたチョコレートには珍しく感動を覚えたものの、直後が刺身では台なしである。
「というか、何でそう変な物ばかり詰めるんですか! 普通ハズレ以外はまともな物にするでしょうに!」
これらでアタリなのだから、ハズレは一体何だと言うのか。若干気分が悪くなってきたのは、最悪の食い合わせのせいだけではないだろう。
「だって、せっかくだから楽しい組み合わせがいいだろ? ちなみに刺身は雨のやつがお土産に新鮮な魚を持ってきてくれたから、捌いてもらったんだ」
チョコの感動を豪快にひっくり返したのは雨の守護者か、と骸は目に暗い炎を点した。
「よろしく言っといて下さいよ。夜道に気をつけて、とも」
「なんだよー。刺身うまかったろ?」
「チョコレートの直後でなく、かつシュークリームの中に入っていなければね…。と言うか、青のりだらけなんだから、口開かないでくださいよ!」
机の上に待機させていたコップを差し出し、なんとなく目を背けた。ちなみにコップの中身は水である。なぜかジョットが水差し3杯分も持って来たのだが、今のところは1杯目の半分くらいまでしか減っていなかった。もしかしなくても、ハズレ用――だろうか。
「悪い悪い。よっし、次は骸な」
「――まさかコレ、ハズレですか……?」
口の中でもにゅもにゅどろどろぐちゃぐちゃした感触と甘じょっぱさとが混合してとんでもないことになりながら、青い顔の骸が尋ねた。
「んー、違うはずなんだけど」
口は悪いが、正直ゲロマズのこれでもハズレではない、と。
(絶対ハズレだけは引けない!!)
必死に水で後味もろとも飲み込む。一気に水差し半分くらいを消費した。
「……で、今のは何です……?」
「どんな感じだった?」
「こう、甘いけれどしょっぱくて、とろとろどろどろもにゅもにゅぐちょぐちゃ…みたいな」
「――ああ!」
形容しがたいので擬音語で表現したのだがジョットにはうまく伝わったようで、ポン、と手を打った。
「プリンと醤油だ!」
(あぁなるほど、言われてみればそうかも……って――)
「なんでプリンと醤油を混ぜるんですか!! プリンだけでいいでしょうが!!」
誰もが同意するだろうという確信を持って突っ込む。
「いやぁ、プリンに醤油かけて食べるとウニの味がするんだって聞いたからさぁ」
「それ、誰からの情報です!?」
「雷のやつ」
(あんのっ……っ……)
自分らしくない罵倒の言葉が浮かびかけて、骸は必死で堪えた。とにかく、一度きちんとしつける必要があるだろう。
「ウニの味、した?」
「しませんっ!!」
暢気なジョットの問いにはさすがに苛立ちを隠せなかった。そもそもシュークリームにウニという時点で何かが間違っている。
「どちらか、ですか」
「まさかここまで来るとは……」
並びあった2つのシュークリームを穴が空くほど見つめ、感嘆の声を漏らす。ここまで随分インパクトのある物ばかり食べて来たせいか、感動――と言っていいのだろうか――もひとしおだった。
「…………」
「…………」
右か、左か。目で何往復もしながら、同時に骸の手が動く。ゆらゆらと右と左の間をさ迷い、狙いを定めているかのようだ。
「ふ。こっち、ですね」
確信したように薄く笑みを浮かべると、骸の手は向かって右側のシュークリームに伸びた。が、
「ちょっと待ったぁぁぁ!」
正面からジョットの左手が伸びてきて、シュークリームに触れる直前の骸の手をがしっとわしづかんだ。
「――何です?」
「な、なんでこっちだと思ったんだ? もっとよく考えた方がいいんじゃないかなぁ〜?」
明らかに上ずった声で言われても、説得力はカケラもない。が、力はジョットが上なので、掴まれた腕は動かせなかった。
「あのねぇ、大人気ないですよ」
勝利を目前にして止められたことで、骸が抗議の声をあげる。シュークリームでロシアンルーレットなどしている時点で十分大人気ないのだが、それはこの際星の彼方にでも置いておこう。
「とにかく、こっちですから」
さっ、と掴まれてない方の左手で右側のシュークリームを取――れなかった。
「……ちょっと」
その腕もジョットによって止められてしまい、なんだか2人分の腕全体で1つの大きな輪を作っているような間抜けな図になっている。2人きりでかごめかごめでもする気だろうか。
「なんでこっちだってわかったんだ?」
まぁ当然と言えば当然の疑問だが、こんな状態で質問しなくても、と骸は呆れた。そして答えない限りは離してくれそうもない。
「そんなの簡単ですよ。あなたって本当に単純ですからね。すぐ顔に出るんです」
単純でどこか抜けているジョットは、骸の手がハズレのシュークリームに近づく度に瞼をぴくりと揺らすのだ。しかも本人は決まってハズレから遠いシュークリームから食べるものだから、救いようがない。
「で、でも、お前がシュークリームを選ぶ時、俺の顔なんて見てなかったじゃないか!」
骸のことだ、最初から勝利を諦めるようなことはしないだろうし、何かしら手を打ってくるとはジョットも予想していた。だから毎回骸が選ぶ番になると、骸の動きをつぶさに観察し、些細な表情の変化も見逃さないように気をつけていたのだ。そして最後まで骸にあやしい動きはなく、ごく普通にシュークリームを選んでいき、結果こうなった。骸の言う通りジョットの表情の変化はあったのかもしれないが、骸がこちらの表情を窺っているようには見えなかったのだ。
「僕が子供の姿のままだからって、幻術を使っていないと思いましたか?」
にやりと笑う口元とは裏腹に、骸の目から突然涙が流れ出す。
「えっ、はっ? ちょっ、骸!?」
それはもうとめどなく涙を零す骸など予想していなかったし、何より有り得ないので、ジョットはただあたふたとするばかりだった。
「ホント単純ですよね、あなたって」
相変わらず涙の粒をぽろぽろと落としながら、骸がショックのあまり力の抜けたジョットの手を自らの頬に持っていく。
「あ。なるほど」
途端、ジョットが気の抜けた声をあげ、脱力した。涙で現在進行形で濡れ続けているはずの骸の頬は、全く濡れていなかった。子供の柔らかい肌はすべすべしていて、涙でぐしゃぐしゃな見た目とはそぐわない。
「そう。ここだけ幻です。ゲーム中、僕はずっとあなたしか見てませんでしたよ」
そういう台詞はもっと違う時に聞きたかったなぁ、と言ったらどんな反応をするか気になったが、今この場で試すほどジョットは命知らずではなかった。
「うぅ〜……卑怯だっ! なんかいろいろ、こうっ…とにかくひどいっ!」
卑怯なのはどっちだ、と呆れ返りながらも、骸は勝ち誇った余裕の笑みで腕にからみついたジョットの手を外す。
「まぁ、そういうわけですから」
僕の勝ちです、と左側のシュークリームに手をのばす――が。
「……そんな情けない目で見ないでくださいよ……」
「だ、だってさぁ! 骸の手料理……!!」
部下にはとてもじゃないが見せられない顔に、骸は思わず手を止めてしまった。
本当にこんなのでマフィアのボスなのだろうかと今更ながらに疑ってしまうほど、それはそれは情けない顔だった。
骸は自分がジョットの前でしか感情を表に出さないのは自覚しているが、ジョットはジョットで部下の前では見せない表情を骸に見せているように思える。自覚があるかどうかまではわからないが、その事実は少なからず骸をくすぐったいような感覚に陥らせていた。でも、決して不快ではないのは確かだった。
「なぁ〜骸〜……」
(あ〜、もうっ)
「わかりましたっ! そのかわり、僕の謹慎期間は短縮してもらいますよっ」
ジョットの哀願に耐えられなくなり条件付きで了承してしまった骸は、自分も甘いなと苦笑したが、この人を家族と認めてしまった時点で今更かとも思った。
「うんうん、短縮するよ! やったぁ! 骸大好きっ」
一方、感情表現豊かなジョットは、大喜びで骸に抱き着いて、大いに骸を困惑させている。あまりに子供っぽいその仕種に頭を抱えたくなったけれど、もちろん骸の手は身体ごと全部ジョットの腕の中に収められてしまっているので動かせない。
(本当にこんなのがボスでいいんですか……?)
マフィアのボスがそう簡単に部下への罰を軽くするなど、普通に考えてあってはならないことだろうに。まぁ今回の骸に対する罰は、元々ジョットが骸の家出(?)を叱る意味で科したものなので組織的意思とは無関係だったのだろうが。
(それにしたって、たかが手料理ひとつでここまでせずとも)
呆れるやら恥ずかしいやらでぐるぐるしながらも、骸を抱きしめるジョットの腕に心地よさを感じていた。
「っとにかく、いい加減離してください!」
そんな自分にも呆れながら、骸は少し名残惜しさを感じつつジョットの腕から逃れる。もう勝負とは掛け離れてしまったが、一応まだ決着には至っていないのだ。
「では、僕はこちらのシュークリームということにしてあげますから」
骸から見て左側のシュークリームを手に取る。ハズレだということはわかっているが、一度交わした取り決めだ。きちんと果たしておきたかった。
「うん。食べてみてくれよ。渾身の一個だからさ」
渾身の、というところに不安を感じるが、まぁ毒物など入れる人ではないし、何とかなるだろう。そんな甘い考えのもと、骸は一口でシュークリームを頬張った。
ずぶにゅっ
嫌な歯ごたえとともに、シュー皮の中からペースト状の何かが飛び出して広がる。
「……〜〜〜〜〜っ!?」
さぁーっと骸の顔から血の気が引き真っ青になったかと思うと、今度は赤らみ、かと思ったらまた青くなり、そしてまた赤くなるのを何度か繰り返し、最終的には顔に汗を滲ませて小刻みに震え出した。その手は慌ただしく水を求めて暴れ、ジョットが水差しを差し出すと、とんでもない力でわしづかんで一心不乱に飲み干す。しかし飲んでも飲んでも汗となって出ていくようで、2杯目も軽々と飲み干してしまった。
「ぅ……ぼ、僕は、辛いのだけは……無、理で――」
「え、わ、骸!?」
息も絶え絶えな様子でぽそぼそと言葉を発すると、そのままばたんとジョットの方へ倒れ込んでしまった。
「おーい、骸! 骸ってば! むく――」
真っ赤に染まって遠ざかる意識の中、骸はジョットの心配そうに見つめてくる顔の穴という穴に唐辛子を詰め込んでやりたい思いを抱いて、意識を手放した。
「……」
舌と唇がひりひりする。さらに、水の飲み過ぎで身体が重いしだるい。その結果、猛烈に不機嫌な目覚めとなった。
「お! 良かった〜!」
そんな最悪の状態の骸をジョットが覗き込んできた。
(あぁ、この際幻覚でもいいから唐辛子を思う存分詰め込んでやりたい……)
滑稽な夢想を描いてクフクフ笑う骸を、ジョットはやはり心配そうに見つめている。
「ごめん、骸が気絶するほど辛い物がダメだなんて思わなくて」
確かにとんでもなく辛かったけれど、あのいかんともしがたい味と合わさったことがトドメになった気がした。
「……アレ、結局何が入ってたんです?」
「あー、アレな、他のに入れてた食材全部をすり潰して混ぜたペーストに、露店で売ってた珍しい激辛キムチをアクセントとして入れたんだ」
(全部? 全部と言ったか、このバカは……!)
全部と言えば、生クリーム、カスタードクリーム、チーズ、チョコレート、ミートソース、トマトソース、ドリアン、アロエ、丸めた刺身、大根おろし、刻んだ焼肉、青のり、ウニもどき(プリン+醤油)、ウニもどき2(海苔+チーズ)、メロンもどき(きゅうり+蜂蜜)、メロンもどき2(バナナ+マヨネーズ)、苺もどき(トマト+蜂蜜)、スイートポテトもどき(羊羹+バター)、キャビアもどき(ヨーグルト+イカの塩辛)の19種類(?)だ。ガキ丸出しの雷の守護者と、日本人だという雨の守護者の入れ知恵か、日本の食材がピンポイントで組み込まれていてそれがまた絶妙なアクセントになって骸を苦しめることになったのだが。
(これだけでも毒物になりそうなのに、そこへさらに激辛キムチ?)
「……殺す気ですか」
骸の据わった目にぎらりとしたものが過ぎった。紅い瞳が妖しく輝き、羽音に似た音をたてる。
「わ、まっ、待った! こんなんで能力使うなよっ! って言うかやめてホントちょっと待ってたのむからやめひぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「存分に味わいなさいっ!!」
幻覚という骸の手料理を突っ込まれたジョットは、味の暴力になすすべもなく信号機のように顔色を変えて、ばたんと倒れたのだった。
「ボス、その晴れ上がった口、どうしたんです?」
「…………名誉の負傷」
骸さんがチョコレートを好きになった瞬間。そして辛いものが大嫌いになりましたとさ。骸さんのプロフィールに悶えて出来た話です。
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2008.4.1