頑張れ、グイド!















!注意!

ミルフィオーレとはいろいろあったけど同盟組んで平和に共存してます。
綱吉生きてます。骸さんは元の身体を取り戻してます。
マフィア嫌いと言いながらせかせか働いてくれちゃってます。黒曜組もしかり。
グイドは暗い過去持ちですが、頑張ってます。青春です。

頑張れ、グイド!
そんな話です。




















 骸さん。

 骸さん。

 あなたには沢山のことを教わりました。

 俺に家族の温もりを下さいました。

 暗い闇から救い上げ、生きる意味を下さいました。

 いくら感謝しても感謝しきれません。

 心の底から敬愛しています。

 ですが――

 ですがっ!!



「あ!」
 廊下の先に敬愛する彼をそのまま小さくしたような姿を見付けて、グイドは上ずった声を上げた。お互いに多忙なので、会うのは随分と久しぶりな気がする。
(まぁ、あっちの世界で会ったりしてたけど)
 とにかく、生身で会えるのは珍しいのだ。嬉しくてスキップしたくなるのを堪えて、でも手を振るのは堪え切れなかった。
「クローム姉さ――」

「あ、骸様!」

「……!!」
 高く上げてぶんぶん振っていた手をぴたりと止めて、グイドは顔面の筋肉を引き攣らせた。そんなグイドに気付くことなく、クロームは目の前に現れた“彼”――グイドの主でもある六道骸に駆け寄った。端から見てもその足取りがとても軽いのがわかって、更にグイドの顔を歪めさせる要因になった。
「お帰りになっていたのですか!」
「ええ、つい先程に」
 嬉しさを隠しもしない純粋なクロームの細い身体を抱きしめて、骸は小さく安堵の息をついた。さらりと艶やかな黒髪が揺れる。何の迷いもなく密着する二人の姿は、グイドの胸を深く抉った。その抱擁がそういう意味のものでないことはよくわかっているけれど、それだけで納得出来るほどグイドは大人ではなかった。
「身体は大丈夫なようですね」
 クロームに対して囁かれた言葉が漏れ聞こえて、グイドは唇を噛んだ。クロームの内臓は骸の幻覚によって補われている。それは奇跡みたいなことで、そんなことが出来てしまう骸を心底すごいと思うが、同時に悔しさを感じるのは仕方のないことだろう。
 骸は幻覚を使える。でもグイドは使えない。
 骸はクロームを救える。でもグイドでは救えない。
 どうしたって生まれてしまう差異は、いつまで経っても埋まる気配がなかった。いや、最初から埋まるはずもなかった。努力で埋められるものではなかったから。
(はぁ……)
 クロームにとって彼は神であり、それは犬や千種、そしてグイド自身にとってもそうなのだけれど、それでもやはり――

「おや、グイド?」

 突如かけられた声に、グイドは慌てて俯いていた顔を上げ、姿勢を正した。なんとか表情を取り繕って、微笑と呼べる範囲内にねじ込む。
「お、お久しぶりです、骸さん」
「ええ、久しぶりですね――生身では」
 穏やかに笑んで、骸はグイドを手招きした。おいでおいで、と子供にするようにされても腹は立たない。招かれるがままに近寄れば、骸の腕がクロームごとグイドを抱きしめた。
「わっ、わわっ……!」
 必然的にクロームとも身体が触れて、グイドの頬がほんのり桃色に染まる。触れた箇所が熱くて、クロームにバレやしないかと心は冷や冷やしていた。隣のクロームはと言えば、咲きかけの桜のように淡く微笑んでグイドの黒髪を撫でていた。母が子に、姉が弟にするようなそれはグイドからすれば気恥ずかしいものだけれど、同時にとても嬉しく、そしてやっぱり悔しい。
 愛が恋より上だなどと、誰が言った。
 グイドは今、クロームに恋をしていた。陰惨な過去を持つゆえに、それは初恋と言ってもいいかもしれない初々しさだった。けれどクロームのグイドに対する情は、驕りでも自惚れでもなく、無償の愛だった。骸がクロームに与えているものと同じ種類の、溢れんばかりに注がれているのに掴みどころのない愛だった。
「骸様もグイドも、おかえりなさい」
 そう言って優しく笑うクロームは、教会のマリアより余程母性に溢れているように見えた。
 ずきん、とグイドの胸が軋む。
(俺だけを見てほしい、なんて……おこがましいんだろうな)
 クロームは優しい。いくつになっても少女のように可憐で、汚れをしらない。マフィアという荒んだ世界に身を置きながら、それでもアメジストの瞳は曇らない。いつだって真っ直ぐに見つめてくるその眼は眩しくて、グイドはクロームと長く視線を合わせることが出来ないでいた。照れだとかそんな次元じゃなく、どうしても……出来なかった。

「あ、ボス」

 クロームが骸の背後の気配に気付き、声を上げた。

「おかえり、二人とも」

 ひだまりを感じさせる声に、骸はクロームとグイドを抱きしめていた腕をとき、振り返る。
「おやおや、久しぶりに見ても相変わらず小さいですねぇ」
 途端、骸の口から出たのは随分とかわいらしい皮肉だった。クロームとグイドに対するものとは明らかに違う態度と声で、骸は嫌味ったらしい笑みを浮かべた。
「う、うっさいなぁ! お前がでか過ぎんの!」
 骸の頭を叩こうとして避けられながら、一応彼らのボスたる綱吉はぷんぷん頬を膨らませた。対する骸は綱吉の連続攻撃をひょいひょい避けて、どことなく楽しそうだ。精神年齢が一気に下がってしまったようにさえ見える。本人の自覚があるのかどうかは謎だが。
「だー、もういいっ、さっさと執務室来い!」
 そしてついには綱吉に腕を掴まれ、ずるずる引きずられるように連行されてしまった。また後で、とだけ残して。
「……」
 ぽかーんとするグイドと対称的に、クロームはにこにこと嬉しそうにしていた。
「骸様、楽しそう」
 ――だそうだ。グイドの目にもそう見えたけれど、それをこんな表情で言えるほど純粋ではなかった。
(……俺、なんでこんなに嫉妬深いんだろ)
 骸が綱吉にとられたみたいで、なんだか腑に落ちない。クロームをとられて骸に嫉妬したかと思えば、今度は骸をとられて綱吉に嫉妬。自分がすごく醜い生き物みたいで、苦しかった。
(きっとアジトに帰ったら犬兄さんや千種兄さんにも嫉妬しちゃうんだろうな……)
 簡単に想像出来てしまう未来に、グイドは思わず頭を抱えた。
「グイド、どうしたの? 大丈夫?」
 するとすぐに真横から鈴の音みたいな声がして、グイドはハッとそちらを向いた。

(ぅわあっ!?)

「……っ!?」
 なんとか声を殺して耐え抜いたものの、心臓はばっくんばっくん大騒ぎだ。

(むむむむっむっ胸がっ! 胸が当たってるよクローム姉さん!!)

 心配そうにグイドの手を抱くクロームの柔らかな胸の感触に、全神経が集中していた。
 なんて言うか……柔らかい。ものっすごい柔らかい!
(ま、まずいよ! なんか妙なボルテージが上がっちゃうって……!)
 純朴な顔に生まれたグイドだが、肉体・精神ともに思春期真っ只中だ。いろんなあれやこれやに興味が出て仕方ないお年頃なのだ。しかしここでどうにかなっても誰も責められないかと思いきや――そうでもないのがボンゴレだ。
 ボンゴレ守護者は揃いも揃ってクロームに甘い。紅一点ということもあるが、何よりその可憐さが庇護欲を誘い、男女とかそういう枠を超えてみんなしてクロームを護りたがる。
(だっ、駄目だ堪えろグイド! お前はグロ・キシニアみたいになりたいのか!)
 グロ・キシニア事件――全く同情の余地もないけれど、頭を過ぎる度に胃が痛くなる事件だった。骸のあんなにも恐ろしい姿は見たことがなかった。ついでに、普段温厚(?)な綱吉や守護者の面々を心底マフィアらしいと思ったのもあれが初めてだった。

(堪えろ……グイドはやれば出来る子だって骸さんも言ってただろ! レオ君は優秀だって白蘭さんも褒めてくれてただろ! なせばなる!! なさねばならぬ何事も!! 耐え抜け、俺!!)

「顔、すごく赤いよ? 熱、ない?」

 そっと頬に手を添えられたと思ったらすぐに顔を引き寄せられて、こつん、と額に何かが当たった。
「……………………っ!!」



 う、うああああぁぁぁああああぁぁぁぁあああ!!!!



 脳内で世紀末かと思う程の大絶叫をあげて、グイドの理性はブッ飛んだ。
(ち、近いっ! く、くちび、るがっ、ぽてっとしたくちびる、がぁっ……!!)
 クロームの小さなおでこがグイドの額にくっついていた。身長差があるので背伸びをしてつま先立ちで、グイドの顔をそっと抱き寄せて。
(もうっ……駄目だ……!!)
 こんにちは、グロ・キシニア。たぶん夕方にはあなたの横にベッドを並べることになりそうです。

「ク、クロームっ!!! ――ぁだっ!?」
「きゃっ」

 がばっと顔を上げた拍子に、グイドの鼻の頭がクロームのおでこと激突した。
「いっだぁ……って、ごめん、クローム姉さん!」
「私は大丈夫だけど……。グイド、大丈夫?」
 クロームがすぐさま心配して激痛に堪えるグイドの鼻に手をあてる。冷たくて気持ちいい。だがそれ以上に恥ずかしくて情けなくて申し訳なくて穴掘って埋まりたくて、グイドは意気消沈の体でどんよりとした空気をまとった。
「フフっ、グイドって、たまにドジだよね」
 くすくす笑われて、グイドは更に気落ちした。情けないにもほどがある。ダサいにもほどがある。
(どうせどうせ、骸さんみたく完璧じゃないさ……。完全無欠? 無理無理。顔だって地味だし、背だって普通だし、筋肉だって付きにくいし、それを言ったら骸さんなんてほっそいけど、でも筋力はきちんとあるし、なんだかんだで基礎トレ欠かさないし、)

「でもそういうところ、好きよ」

(そうそう、そういうところも好き――って、)

「今、なんてッ!?」

 勇み過ぎて語尾がかなり上がった。でもそんなことより何よりも、クロームの言葉の方が大事だ。
 なんだか前のめり状態のグイドに、クロームは曲げた人差し指を口元に添えてころころと笑った。そんなクロームの様子は否応なくグイドの胸をときめかせてどうしようもない。期待に胸も膨らんだ。
「だから、あなたの失敗しても一生懸命頑張るところ、好きよ」
 さらりと言われた衝撃発言に、グイドの精神はよくわからない高みに昇った。薄暗い雲がさぁっと裂けて陽の光が差し込んでくるような眩しさに目が眩む。
(あぁ……神様仏様骸様っ!! 俺、俺っ――)


「あなたは自慢の弟だわ」


 …………。

 …………。

 …………。

 …………。

 …………え?

「じゃあ私、これから犬と千種と一緒に骸様のご帰還パーティーの準備があるから、また後で」
 そう言うと何の躊躇いもなくクロームはグイドに背を向け、さっさと歩き出した。
「え? えっ?? ちょ、ちょっと待っ――」
 グイドは咄嗟に手を伸ばしてクロームの肩を掴もうとすると、触れる前にくるりとクロームがこちらを向いて自身の手の平をグイドのそれに重ねた。
「もちろんグイドの帰還パーティーも兼ねてるから、遅れないようにね」
 そうしてふわりと手を離すと、後はもうこちらを振り返ることなく去っていった。残されたのは、傷心のグイドだけ。

「…………へ」

 ぽかんと宙を見つめ、グイドはしばらく動けなかった。




















「あーぁ、ハートブレイク。かわいそー」
「……何がハートブレイクですか。覗き見なんて悪趣味な」
 そんなグイドを陰から見守る男が二人。綱吉と骸だ。ちなみに、執務室に行くと見せかけて気配を殺してずっと観察していたのだが、当然観察対象のグイドは気付いていない。むしろそちらの方が『かわいそー』だった。
「なんだかんだで骸も見てたじゃん。同罪同罪」
「はいはい、そうですね。まあとにかく、なんとも哀れな状態ですねぇ、グイドは」
「うーん……なんかお前のせいも大きい気がするんだけどなぁ。お前ってクロームに対して特に過保護だし」
「それはそうでしょうけど、仕方のないことです。クロームもグイドも僕によく似ているけれど、クロームとグイドは似ていない。グイドはクロームのようには決してなれないし、クロームにはグイドのようになってほしくない。僕は二人の幸せを願っていますが、二人で幸せになるには壁があり過ぎますよ」
 思いの外真剣な声音に、綱吉は少し驚いていた。
「……お前って、やっぱり優しいよな、なんだかんだで」
「今更気付いたんですか? ……おや?」
 くすくす笑う骸の視線の先でグイドはぶんぶんと頭を振り、次いでバチンと思い切り自分の両頬を叩いた。そして気合い十分な感じで拳を握り、意気軒昂と歩き出す。まだまだ諦めないらしい。
「おお〜、若いね〜。くじけないところは骸ゆずりかな、グイドは」
「クフフ、そういうところ、可愛いでしょ?」
「自慢の我が子ってとこかな?」
「ええ。そして――」

 クロームの自慢の弟、なんですよ。

(姉さん、なんて呼んでるうちは、特にね)














突発でグイド→クロームでした〜…………ハイすいません!!
いや、なんか布団の中で妄想が膨らみやがりまして、ケータイで打ち始めたら親指ちゃんが止まらず、いつのまにかけっこう長めの短編になってました。
グイドも初代同様妄想のしがいのあるキャラですから、捏造しまくってます。
あんな顔して殺人犯ですから、暗い過去があっていろいろ苦しんでるんだろうな〜と思う反面、黒曜組とは家族みたいに過ごしてくれてたら萌える!
骸さんは一家の大黒柱ですから、犬や千種は兄貴かな?
じゃあクロームは姉さん? 姉さん!? 姉さ〜ん!!!
という妄想の元、出来上がりました。姉さんと呼びつつ、実際は恋しちゃってて、でもクロームは弟扱いしかしてくれないとかね。定番だけど萌え!
ひょっとしたらちょこっと続くかもしれません。

2008.9.22