その頃の彼ら




「はぁ……はぁ……っ!」
「はぁ……あんっの、みかん頭……! はぁっ……」
 
 果てない死闘の果てに、無駄としか言いようのない共倒れ。限界をとうに超えた綱吉と骸は、徹底的に破壊された街の一角で大の字に転がっていた。恐怖に逃げ惑った人々はとっくにどこかへ去り、雲雀はと言えば、同様に疲れ果てていたものの、街の風紀を正すためとどこかへ消えた。いくらなんでもタフ過ぎると二人は呆れたものだ。
「無事ですかぁ、綱吉君……」
「なんとかな……はぁ……」
 なんとかボロボロ程度で済んだものの、接近戦に特化した綱吉は雲雀の攻撃をもろに受けていたために、どうにも動けそうになかった。骸は幻覚の使い過ぎで精神的に参っていたが、肉体的にはまだマシな方である。
「クリスマスに、何、してんですかね……僕ら……」
「それ、言うなよ……虚しい……」
「どうせ今頃、グイド達はよろしくヤってんでしょうね……」
「ヤってるって言うな、ヤってるって……」
 などと、勘違いしたままの二人は、今頃グイドとクロームの二人が微笑ましい指輪交換を行っていることを知らない。どうにもズレている二人だった。
「ねえ、綱吉君――」

「いやだ、ヤらない」

 骸の言葉を先読みして、綱吉はずりずりと骸から距離をとった。もちろん立てないので、転がってだ。割れた石畳が背中にゴリゴリと擦れて痛いが、そうしないとそれより遥かに痛い思いをするのがわかっているのでためらわない。
「即答ですか。クリスマスなんですよ……? それくらいしないと今日一日何をしていたのか意味不明ですよ」
「お前が“性夜”状態でどうするんだよ……。不純同性交遊って雲雀さんに言われるって」
「あの馬鹿なんぞどうだっていいでしょう。ようは、僕がヤりたいかどうか、です」
「お前なぁ……」
 呆れの視線を送ろうと綱吉が骸の方を振り向く。
「んぁっ!?」
 その時にはもう、骸は行動していた。
 のしかかるように綱吉の身体に乗り上げ、舌を綱吉の首筋に這わせる。
「ふっぁ……ちょ、ちょっとむくッ、ぁ……!」
 熱くてくすぐったくて、綱吉は懸命に身をよじる。けれど疲労度の差ゆえか、元来の体格の差ゆえか、全然全くどうにかなる気配すらなかった。
「ま、待てって……ばっ、ヤ……!」
 ネクタイをほどかれ上着を剥ぎ取られ、薄いワイシャツごしにしっとりと骸の手が触れる。真冬の寒さが辛いはずが、骸の手によって体内に蓄積されていく熱の暑さの方が勝っていた。
「ま、待った、待って! ホント、駄目だってば……っ」
「どうして。これがクリスマスプレゼントでいいですから……」
 どうせ用意していないのでしょう、と切なげに囁かれて、綱吉は小さく溜め息をついた。
「人の話、聞けよな……。上着のポケット。見てみて」
「……?」
 不審そうに目をすがめつつも、骸は言う通りに剥ぎ取った綱吉の上着の内ポケットをあさる。こつん、と。何かに触れた。
「これ……」
 恐る恐るとり出してみると、それは紺色の小さなジュエリーボックスだった。
「……あ、開けても、いいんですか……?」
「何震えてんだよ。開けていいって。お前のために買ったんだからさ」
 ちょっと照れくさそうに笑う綱吉に、骸は妙にどぎまぎとしてしまう胸を押さえてボックスを開けた。中にちょこんと並んでいたのは、二つの指輪だった。アメジストと思われる小さな石がそれぞれシルバーのリングの中央にひとつずつ埋め込まれ、あくまでスリムでシンプルな、指輪。ペアリングというより、同じ物が二つあるだけのような素っ気なさだが、そんな中にも綱吉の精一杯が見て取れて、骸は思わず綱吉を見つめていた。いつもの余裕などとうに失われ、困ったような、慌てたような、骸らしくない表情で口をもごもごさせながら。
「……それ、付けないのかよ?」
「え、ええ、と……ど、どこに……?」
「右手の……薬指」
「え!? あ、あの……そういう意味に、とってしまいますよ?」
「だ、だから、もう……っ、貸せ!」
 頬に赤みを帯びた綱吉は強引に骸の手から指輪を奪い、自分の右手薬指にはめてしまう。そして唖然とする骸の右手を引き、その薬指にも同様にはめた。いつどこでサイズをはかったのか、それはまるで骸のために作ったかのようにぴったりだった。
 更に、
「つ、綱吉君っ?」
 骸の指輪の上に、綱吉はそっと唇を押し付けた。もちろんキスなんて骸からばかりではあるが散々してきた。浅いものも深いものも、何度も。今更指への、しかも指輪の上にキスなんて……何故こんなにも胸が高鳴るのか、骸自身にもわからなかった。

「……メリー・クリスマス、骸」

 そんな上目遣いに告げられて、骸はもう、止まれなかった。










「は、ぁ……なあ、骸」
「なんです?」
「お前からの、プレゼントは?」
「……本当は、プレゼント代わりにたまには優しく抱いてあげようかな、とか思ってたんですけど……。ごめんなさい、無理です」
 ぐ、と繋がったままの腰を揺さぶられて、綱吉は息を詰めた。
「あッ、動、くな……っ!」
「君が可愛いのがいけない」
「やっ、まっ……は、激し、ぃ……っあ、あァッ……!」

 熱い夜を過ごす二人は、知らない。
 グイドとクロームの指にも、値段は違えど価値は同じ指輪がちょこんと輝いていることを。
















はい、すいませんでしたー!
ごめんなさい、なんでかこう、続きを考えるのが好きなもので……!
管理人の書く6927の中では甘めですね。
ぶっちゃけた話、ガチエロ(ひどい言い方)にするか焦れったく終わるかで迷いました。
ただまあ、ねぇ。若い二人(実は清純なお付き合い)をいさめる大人二人(骸さんの都合で不純まっしぐら)があんまりヒドイ方向にいくのもなんなので、ここらへんで留めておきました。

こののち、二人はグイドとクロームの指にオモチャの指輪を見つけて、もう邪魔するのはやめようと決心するとかしないとか。
ま、そんな未来もあるんではないかなー、程度に。


2008.12.23