グイドと私と牛くん
どたどたどた。
誰か走っているみたい。というか、近付いて来るわ。廊下は走っちゃダメなのよ。
「わーっ!!」
角を曲がろうとしたら、目の前にそのダメな人が現れてびっくりした。こっちに来るとは思わなかったわ。
「きゃっ」
「うのわぁぁっぶぼべ!!」
でも、ぶつかりはしなかったの。その人は思いっきり身体を捩って、私ではなく壁に激突しちゃった。
……すごく、痛そうだわ。
「大丈夫?」
「ぶぇ、えぐっ、あ……いや、泣いてないですよ! ……カッコ悪いところをお見せしました」
ちょっと涙ぐんでるけど、その子供みたいな――実際まだ子供なんだけど――牛柄のシャツの人は、片目を閉じて立ち上がった。私が言うのもなんだけど、ちゃんと両目で見た方がいいと思うわ。前に私にぶつかったし、また何かにぶつかっちゃうもの。
ああそうだ、この子にも聞いてみよう。
「あのね、牛くん。グイドのことで何か知らない? どんなことでもいいの、教えてくれないかしら」
「グイドさん……ですか。正直俺はあんまり関わりがありませんからよくわからないですが、そうですねぇ……ちょっと、怖い?」
「……グイドが?」
「あ、いや……まあ……そうです」
「グイド、優しいよ?」
「……グイドさんが優しいのは、クロームさんやお仲間にだけですよ。そう、あれは忘れもしない……いや、忘れられない……」
「何かあったの?」
「……以前、あなたと正面からぶつかってしまったことがありましたね。その節は本当に申し訳ありませんでした」
「別にいいわ。グイドが受け止めてくれたから怪我もなかったし」
「そう! そこにあの人がいたのが僕の不幸の始まりだった……!」
牛くんは顔を両手で覆って震え始めちゃった。風邪かしら?
「牛くん、大丈夫?」
「ご心配なさらず! というか、絶対に心配しないで下さい! 後が怖いんですよ、後が!」
後?
私が心配すると、風邪が悪くなるのかしら……。ちょっと、悲しいわ。
「ああ、いえっ、そんな顔をしないで! 後でいじめられる……っ!」
牛くんは慌ててキョロキョロと辺りを窺ってびくびくしてる。何かしら。
「俺がグイドさんのことで知ってるのは、すごく怖いってことだけです。いじめ方がプロめいてるんですっ。骸さんも雲雀さんも怖いけど、あの人も怖い……!」
それだけ言って、牛くんは来た時同様、どたどた走って逃げ出す。
「グイドさんには言わないでくださいねー!!」
最後の方の声はだいぶ遠のいてちっちゃかった。
本当はもっと詳しく聞きたかったんだけど……仕方がないわ。
グイド、怖いかしら?
可愛い顔をしてると思うけど。
『グイドはいじめのプロ』
謎が深まったわ、グイド……。
2008.11.6