グイドと私と晴の人




 少しうきうきして廊下を歩いていたら、「しっ、しっ」って何かを追い払うような声がしたわ。
 声の方を見れば、晴の人が胸の前でグーを突き出しながら歩いてる。
 でも私知ってるの。あれはしゃどーぼくしんぐって言うのよ。心の目にだけ映る誰かさんと拳で語り合うんだって。
 心に目があるなんてその時初めて知ったけど、本当なのね。目を閉じると、頭の中にグイドが見えるもの。

「大発見だと思うわ、晴の人」
「うぉ? おお、クロームではないか」

 誰かさんと語り合うのをやめて、晴の人が立ち止まる。
 この人はいつでも眩しい。ボスいわく、とても明るくて頼りになるお兄さんだけど、前しか見ないんだって。その感じはなんとなくわかるわ。
 でも後ろや下を向くよりは、前を向いた方がいいと思うの。

「どうした?」
「あのね、グイドのことが知りたいの。どんなことでもいいから、教えて?」
「ふむ……グイドか……。そうだな、少々筋肉が足りん!」
「…………筋肉……」
「そうだ! 細いしパンチも弱い! 速度と反射神経はなかなかいいが、力が圧倒的に足りんのだ!!」
「……グイド、弱くないよ」
「お、おお、すまんすまん。いや、以前強くなりたいと俺の元へ来たことがあってな」
「グイドが?」

 初耳だわ。
 グイドはあんまり守護者の人たちを好きではないみたいだったのに。

「あいつはナイフさばきに関してはなかなか鋭いものがあるが、それに併用すべき体術がまだ未熟でな。俺が少しばかり揉んでやったんだ」
「…………揉む?」
「ああ。グイドはああ見えて負けず嫌いだろう? 何度も立ち向かって来て、なかなかガッツがある。今度会ったらまた揉まれに来いと伝えてくれ!」
「……わかった」
「では、沢田に呼ばれているので、またな!」
「うん。ありがとう」

 晴の人はまた拳で誰かと語りながら行ってしまった。
 ……グイドは揉まれるのが好き、なのかしら?

 『グイドの趣味は、揉まれること』

 またひとつグイドのことがわかったけど、ちょっと遠退いた気がするわ。

















2008.11.6