こらえろ、グイド!
!注意!
ミルフィオーレとはいろいろあったけど同盟組んで平和に共存してます。
綱吉生きてます。骸さんは元の身体を取り戻してます。
マフィア嫌いと言いながらせかせか働いてくれちゃってます。黒曜組もしかり。
グイドは暗い過去持ちですが、頑張ってます。青春です。
頑張れ、グイド!
そんな話の更なる続編です。
「情けない」
「……ハイ」
「頼りがいがない」
「おっしゃる通りで……」
「甲斐性がない」
「すいません……」
「ひとまとめにするなら、まだまだ子供ってことですね」
「……ご、ごもっともです」
ぐさ、ぐさ、ぐさ、ぐさり。
容赦なく胸を抉られて、額に『肉』だのなんだのと書かれたグイドは小さくなって更に小さくなって、なんだかもう消えてしまいそうだった。というか、消えてしまいたかった。若く傷付きやすい心はズッタズタに切り刻まれ、もはやみじん切り状態に近い。それというのも、その凶器たる言葉の発信源が彼の想い人の顔をしているからというのが大きかった。
「あ、あの……お願いですから、見た目だけでも変えて下さいませんか……?」
「ほぉ? 僕に余計な力を使わせるどころか、君の愛しのクロームに負担を強いる気ですかそうですか。冷たい男ですねぇグイド。そういうところが甲斐性なしたる所以かもしれませんねぇ。ああ、言い訳があるならいつでもどうぞ?」
「俺が悪かったですゴメンナサイそのままでいいですというかむしろそのままでいて下さいお願いします骸さん!!」
直角よりもなお深く頭を垂れるグイドと、それを見下ろす可憐な女性――クローム……ではなく、骸。そんな涙が出てきそうな光景に同情の眼差しを送りながら、傍で見ていた綱吉は深く息をついた。
「それくらいにしてあげなよ、骸。てか、今潜入中だろ? こっち来てこんなことしてる暇なんてないんじゃないの?」
「こんなこととは何ですか! むしろ僕からしたら任務の方が“こんなこと”です!」
「忠誠心ゼロだなお前!?」
心底からあきれ果てて、綱吉は額に手を添えた。ちょっとばかり頭痛がする。
「……まあいいでしょう。そろそろ戻ってちゃっちゃと終わらせます。それまでにグイド、もう少し大人になりなさい」
「は、はい……」
頼りない返事にクローム(中味は骸だが)の小さな手がグイドの後頭部に伸び、ぐぃっと引き寄せる。
そして、ちゅ、と頬に軽いリップ音。
「返事が女々しい男は嫌いよ? グイド」
至近距離でにやりと可憐さのカケラもない笑みを見せられて、グイドは腰が抜けたようにその場に崩れ落ちた。同時にクロームの身体も意識を失って崩れ、綱吉に支えられる。
「……あ、悪魔だな、あいつ……」
しみじみと呟きながら、綱吉はクロームの身体を抱え直した。
「グイド、気持ちはわかるけどとりあえず立とうな。な?」
「……う、うるさい……っ、マフィアが姉さんに触るなっ」
案外立ち直りの早いグイドは直ぐさま綱吉の腕からクロームを奪い、……固まった。
「うん、うん、マフィアが嫌いなのは知ってるし、俺いろんな嫉妬のはけ口になってるな〜って自覚あるからいいんだけど、とりあえず落ち着け? そんな欲望と必死で闘ってる眼、すんな?」
クロームのぷっくらした唇やらふんわりした胸元やらにちらちら視線をやって唾を飲んでは自己嫌悪に落ち込むグイドを見かねて、綱吉はソファーにクロームを寝かせるよう身振りで指示した。ここはあまり使われてはいないが骸の自室であり、新品同様のベッドがあるのでそこに寝かせても良かったけれど、今ベッドにクロームを寝かせたりなんかしたらグイドの理性がやばそうなのでやめておいた。
「若いな〜、ホント」
「悪かったなっ」
そっとソファーにクロームをおろすグイドは、きっちりと目を閉じていた。せめてもの抵抗というか最後の砦というか、彼なりの精一杯の努力らしい。
でも本当の本当は間近でクロームの姿を見たいのだろう。よく見れば固く閉じた瞼はブルブルと震え、閉じようとする力と開けようとする力とが拮抗していることがわかる。ここまで来るともはや不憫以外の何ものでもない。
「で、でもさぁ、骸じゃないけど、いつまでもそんなんじゃクロームに振り向いてもらうなんて夢のまたゆ――はい、ごめんなさいっ!!」
グイドが懐に手を忍ばせたあたりで綱吉は即座に謝った。ボスとしてどうなんだとかそんなことより、グイドを怒らせる方がまずい。グイドは確かに骸に似ていた。案外直情的なところや情に篤いところ、そして怒ると凶暴な本性が出てしまうところなど、特に。
どうどう、と馬にするような仕種でグイドを宥めて、悪かったともう一度謝った。
「じゃあさ、クロームに振り向いてもらえるように予行演習しようか!」
「……予行演習?」
「そう! クロームに、姉としてじゃなくひとりの女性として愛してるって伝える練習!」
「あ、あああっ、あいっ……愛!?」
「あー、赤くなるな赤くなるな。想像力豊かだな〜、10代」
「し、仕方ないだろ!」
あからさまな子供扱いにグイドはそっぽを向いてむくれた。見た目で言うなら綱吉の方が余程子供なだけに、物凄く悔しい。
「ていうか、アンタだってそういう浮いた話のひとつもないくせに、偉そうなこと言うなよなっ」
苛立ち紛れに突っ掛かれば、綱吉はグイドの予想以上にダメージを受けたようで、サッと表情を曇らせた。
「ふっ……そうか、それを言うか……ハハ……」
背後にどんよりとしたものを背負いながら呟く綱吉に、むしろグイドの方が驚いてしまう。
「え、えぇ? は?」
「傷付くよなぁ、ホント。やばい、涙出てきた……ぐすっ」
「わ!? ちょ、ちょっと……!?」
みるみる俯いていく綱吉の姿に焦って、グイドは誰に見られるでもないのに綱吉の顔を包み隠した。どうしてかうっすらと罪悪感がある。
「あいつさぁ……」
グイドの肩に額を押し付けて、綱吉はくぐもった声で呟いた。
「あ、骸のことね。とにかくあいつさぁ、俺に女の子近寄らせないんだよね、何故か」
「は、はあ……」
「あいつ見た目いいだろ? 男のくせしてびっくりするくらい美人だろ? あれで睨まれたら大抵の女の子は自信なくして傷付いて寄ってこなくなるわけですよ。わかるだろ、そのかんじ」
「あ、あぁ、まあ」
綱吉の言わんとすることは、それはもうよくわかった。骸の眼は鋭い。吊り上がっているだとかそういうことではなく、奥の奥まで見透かされそうな類の鋭さで、あの眼に見つめられるとどうしても背筋が伸びてしまうのはグイドだけではないだろう。
「そんな状態でずっと傍にいられちゃ、そりゃあ誰も俺の方には来れないっての! 上層部のおじいちゃん達は跡取り作れ〜跡取り作れ〜ってウルサイしさ!」
「へ、へぇ……」
「だからさぁ、グイドとクロームがくっついてくれると、あいつも自分の恋とかに専念できるじゃん? あんなかっこいいんだから、ちょっとアプローチするだけで相手なんて即コロリだろうしさ〜」
「え? あ、あれ……?」
(骸さんの好きな人って――)
「あ、あの――」
「つまりだっ!」
がばっと顔を上げて、綱吉は熱のこもった瞳で熱く語る。
「グイドはグイドで幸せになってもらって、骸は骸で幸せになってもらって、そして俺は俺できちんと伴侶を得たいんだよ! 愛の言葉なんて俺には似合わないけど、男なら一度はそういうロマン溢れるあれやこれやを経験してみたいってのは当たり前だろ!? な!? 例えばこうさ、夕日を望むテラスで相手を抱きしめて、」
「うぇっ!?」
言いながら、綱吉はグイドの背に腕を回した。動揺するグイドをそのままに、綱吉は続ける。
「『夕日を見つめる君は、誰よりも輝いているよ。でも出来れば、君の視線は俺が独り占めしたいな』……なぁんていくらなんでも寒――」
ガタタンッ
突然の物音に、鳥肌状態のグイドとノリノリの綱吉は同時に振り向いた。そして二人はサーッと青ざめる。
「……二人とも、そういう関係だったのね。ううん、大丈夫よ、どんな主義・趣味・嗜好でもグイドはグイド、ボスはボスだもの」
いつの間に起きたのか、いや、いつから起きていたのか、ソファーにちょこんと座ったクロームがやんわりと微笑んでいた。
「ええっ!?」
「ちょ、ちょっと待ったクローム! それ誤か――」
「あ、骸様?」
必死に抗議しようと焦る二人を置いて、クロームは頭に手をやって例の人と交信しだした。何かと厄介な、あの人に。
「……はい。ええ、そうです、グイドが大人に」
((違ぁぁぁぁぁぁぁぁうっ!!))
「待ってクローム!!」「待って姉さん!!」
そんな二人の叫びも虚しく、止めようと伸ばした手の先で彼女は纏う空気を一変させた。『ゴゴゴゴゴ』、なんて背景に浮かんでいるのは錯覚か。
「……クフフ、まさか一日に二度もこちらへ来ることになるとはねぇ」
((きっ、来ちゃったぁぁぁぁぁぁ!!))
二人は脳裏で大絶叫して、どちらからともなく強く抱き合った。ホラーを見る時についぬいぐるみやクッションを抱きしめてしまう類のものだが、クローム――骸はぎらりと視線を強めた。
「ええはい、誤算でしたとも。そう、誤算だらけでしたよ? まさかグイド、お前と綱吉君、とが……っ!!」
((めちゃくちゃ動揺してるぅぅぅぅぅ!?))
「……こほん。青天の霹靂ってんですかねぇ、こういうの。ああ、大空にはぴったりの言葉ですかねクハハハ!!」
((眼が笑ってないぃぃぃぃぃ!!))
「まあでも貧弱な君には油あげの方がお似合いか。そしてグイドはトンビですね。クフッ、クフフッ、猛烈にトンビ狩りがしたくなってきました。もれなく油あげが付いてきますし? ……ところで、いつまで抱き合ってんです、か!」
すがんっ!!
二人の丁度真ん中の腹のあたりを三叉槍がぶっ飛んでいき、背後の壁に突き立った。直前にお互いを突き放していなければ確実に内臓をいくつか抉るコースだったのは気のせいだと思いたい。
突風すら感じたその一撃に顔を青ざめさせるより早く、それこそ世界最速じゃないかという勢いで二人は同時に深く腰を折った。
「「すいませんでしたぁぁ!!!」」
グイドはともかく、綱吉の方は部下が見たら実家に帰りそうな姿だ。土下座こそしていないものの、威力は同等かもしれない。
まあ、骸には効かないわけだが。
「クフフフ。何を謝っているのですか? 別にいいのですよ? 誰が、誰と。いつ、どこで! な・に・を、しようとも!! ……個人の自由でしかありませんものねぇ?」
やたらと抑揚のついた口調がめちゃくちゃ怖い。しかも見た目はやはりクロームのままだ。特にグイドのダメージが深刻である。
(グ、グイド! しっかりしろグイド!)
綱吉は頭を下げたまま小声でグイドに呼び掛けるが、グイドは哀れにもぷるぷる震えて今にも気絶しそうに見えた。
(ちょっ……グイド!? マジで大丈――)
「ほぉ。よそ見、ですか」
いい度胸じゃないですか、と冷たい声が降って来た。
そしてガッと首根っこを掴まれたかと思うと、綱吉の視界90度は回転していた。すぐ目の前に骸の嘘っぽい微笑が迫る。
更に迫って、もっと迫って、ひたすら迫って――
「はふぇっ!?」
ついには、くっついた。
唇と、唇が。
綱吉の唇と、見た目クロームの骸の唇が。
ちっちっち……と部屋の鳩時計(犬が拾って来たものだ)の音がやけに耳につく。
そしてそのリズムに合わせるかのように、舌が出し入れされる下半身に猛毒な音が響いた。
ちっちっちっ
ちゅ、んちっ、ぴちゃ……
ちっちっちっ
「ふぁっ……んっ、待っぁ……!」
ちっちっちっちっちっちっ
「ん……綱、吉くん……」
かちん!
ぱっぽー、
ぱっぽー、
ぱっぽー、
ぱっ――
「う、うぅぅぅぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!」
目撃者グイドは天を仰いで鼓膜を破らんばかりの叫びを上げた。ちなみに、防犯上の理由からか元々音が響きやすい屋敷なので、その声は当然のごとく全室に地響き同然に響き渡り、ファミリー全員が漏れなく警戒体制をとったのだが、それはまた別の話。
「――ぁっ…………」
そしてハートブレイクどころかソウルブレイクなグイドは、白目をむいてふらついた。
しかし、
「寝るんじゃありません」
ばちん!
骸(クローム)の小さな手が無情にもグイドの頬をひっぱたいて強引に意識を繋ぎ止めた。更にはその顎をこちらを向かせる形で固定し、綱吉との濃厚なキスシーンを余すところなく見せ付ける。綱吉も微弱ながら抵抗しているが、いかんせん相手はクロームの身体だ。手荒なことは出来ないし、酸素が不足し始めて力が抜けてきているので論外だった。
「も、もう、やめて……ください……! 謝ります。いくらでも謝りますから……だから……! ほらっ、額に土だってつけちゃいますから骸さぁんっ!」
「むくっ……ふぁ、ん……ちょっ……!」
「んん……」
綱吉にキスを強要する骸(しつこいが、見た目はクローム)に、骸から逃れようとする綱吉。そして額に『肉』やらなんやら書かれたままひたすら土下座を繰り返すグイド。
三者三様、完全にちぐはぐな図はカオスとしか言いようがなかった。
そんな中、最悪のタイミングで部屋の扉が動いた。
「レオくーん! ラクガキ、メイク落としで落とせるんじゃな――」
ノックもなしにいきなり入って来た白蘭は、その異様な光景を見てカチンと固まった。
「白蘭さん? どうしまし――」
続いて入って来た正一も、コチンと固まった。
「ひっく……骸、さん……お願いですから……うぇっく、えぐっ……なんでもしますから……!」
「あふっ……く、くるし……ぃ!」
「ふ……綱吉、くん……」
「「………………どんなプレイっ!?」」
この後、同盟破棄の提案が正一から提出されたのもまた、別のお話。
突発グイド→クロームまたも続いちゃいました〜!
しかもちょっとばかりムクツナ要素が強めです。
時間的には『耐え抜け、グイド!』のすぐあとになります。グイドは顔にラクガキされたままです。
ちなみにクロームはファースト・キスではありません。さすがの骸さんも、ファースト・キスを勝手に使わせるようなことはしないと思うので。
相手はまあ、骸さんもあり得るし犬とかでもかわいいかも。そこらへんは自由な解釈でお願いします。
更にちなみに、グイドの綱吉に対する口調でかなり悩みました。が、綱吉も言っているようにバリバリ嫉妬してるので、結果的にアレで落ち着きました。ちょっとヤンチャ過ぎたかも?
更に更に続くかは未定です。
2008.10.21