耐え抜け、グイド!
!注意!
ミルフィオーレとはいろいろあったけど同盟組んで平和に共存してます。
綱吉生きてます。骸さんは元の身体を取り戻してます。
マフィア嫌いと言いながらせかせか働いてくれちゃってます。黒曜組もしかり。
グイドは暗い過去持ちですが、頑張ってます。青春です。
頑張れ、グイド!
そんな話の続編です。
「や! 久しぶりだねレオ君!」
そう言って片手を上げた軽い男は、こう見えてボンゴレと並ぶ大ファミリーを束ねている立派なボスだった。名を白蘭といい、白い髪に色素の薄い菫色の瞳、黒いワイシャツに白いベストと、なんともモノクロに近しい人物だった。
遠目で見てもすぐわかるその姿を視界に入れた途端、グイドはくるりと踵を返した。しかし――
「ひっどいなー。無視されたら僕泣いちゃうよ?」
「……っ!」
気付けば、目の前がモノクロに占領されていた。
(動きが全然見えなかった……)
実力の違いというものをはっきりと見せられてしまい、グイドは内心ショックを受けていた。最初からわかっていたことだけれど、それを思い知る度に胃が痛むのは仕方のないことだろう。
「……お久しぶりです、白蘭“様”?」
せめてもの意趣返しに嫌味をたっぷりこめてやれば、白蘭はきょとんと目を丸くしたあとで満面の笑みになった。当然ながらグイドの予想外だ。
(あ、あれ!? この人そう呼ばれるの嫌いだったよな……?)
「レ〜オ君。うしろうしろ」
「え――」
つんつんと背後を指差されて、グイドが振り向く。そして0.1秒と経たないうちに硬直した。
「…………“様”?」
ぽつりと呟かれた高い音は、それでも普段からすると少し低い。
「ひっ!? ク、クローム姉さん!!」
グイドの真後ろにいたのは、小柄ながらバランスのとれた身体に主と同じ髪型をのせた女性――グイドの想い人、クロームだった。元来の表情の薄さに加えて眼帯で片目を隠しているせいか無表情に思われがちだが、その分ひとつしかないアメジストの瞳に宿る感情は濃い。特にグイドや骸や犬や千種、すなわちクロームにとって家族と呼べる間柄の人々に関する時は、特に。
「グイド。この人のこと、“様”付けで呼んでるの?」
グイドは心の中でヒィィィィィィ、と引き攣った叫びを上げた。クロームの瞳が怖い。といっても怒っているわけではないのだ。ないんだけれども、どうしても恐い。それはグイドが普段クロームに感じているやましさから来るものなのかもしれないが、グイド本人には判断がつかない。
反射的に一歩後退すると、肩を掴まれた。
誰にって?
うん、白黒の人に。
「びゃ、びゃくらんさ――」
「そうだよ、髑髏ちゃん。やっぱりレオ君て優秀だからさぁ、ミルフィオーレに引き抜こうと前々からアプローチかけてたんだけど、ついにオッケーしてくれたんだよ〜」
「ちょ、何言っ――だぁっ!?」
背中の肉(というか皮)を思いっ切り捻り上げられて、グイドはくぐもった悲鳴を上げた。
痛い。かなり。
「グイド、本当?」
(ひぃっ!!)
静かな声が、逆に怖い。ヒヤッとしたものが全身を駆けて、どんどん体温が下がっていくような気がした。そんなグイドとは逆に、いまだにグイドの背中をつねっている白蘭は鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌なのが空気でわかった。好きな女の子ほどいじめるタイプなのかもしれない。グイドは女の子ではもちろんないが。
「ち、ちが――ぃませぇんっ!!」
ぐりりっ、と剥がれるんじゃないかという程に強く捻られ、思わずグイドは肯定を口にしていた。ある一時期白蘭の側近役を演じていただけに、どうにも白蘭には逆らえないというか、逆らったらどうなるかが骨身にしみたというか……。
(勘弁して下さい白蘭さん!!)
涙が滲んだ眼で視線を送るも、白蘭はそれはもう明らかにニヤニヤしていた。隠す気もなく楽しんでいた。『他人の不幸は蜜の味』を地で行くどこまでも嫌な性格だった。残念ながらそれは獄寺などから見れば、骸とよく似ていると言われる類のものなのだが。
(あ、あなたって人は……っ!)
「グイド」
「はいぃ!」
静かな中に強制力のある声に、グイドは驚異的タイムで背筋を伸ばした。それはそれはすごい勢いで、白蘭の指を弾き飛ばすくらいだった。
(あ、あれ? 今の――)
「まったく、お前は厄介な人に気に入られてますね」
はぁ、と妙に色っぽい吐息に違和感が強まり、その瞳の奥に宿る強大な力を感じてグイドは確信した。
「骸さん!!」
「お、骸君! やっほー!」
同時に白蘭も声を上げて、さっきまでグイドの背中をつねっていた右手をひらひらと振った。
「何がやっほーですかマシュマロ馬鹿が。その軽い脳みそまで真っ白になったのでないなら、さっさとグイドから離れることですね」
そんな白蘭とは反対に骸は心底嫌そうで、ぞんざいに手を振った。見た目はクロームそのままに小さな口から辛辣な言葉を撃ち放って、グイドのハートにがつんがつんと釘を打っている。しかし当の白蘭はといえば、何故だか妙に眼をきらきらと輝かせた。
「うわ、見た目髑髏ちゃんのまんまだから、変な趣味に目覚めそう……」
「っ!?」
耳を疑う言葉に、グイドはぐりんっと首を巡らせて白蘭を睨みつけた。すっかり忘れがちだが、これでも数々の修羅場をくぐり抜けているグイドだ。眼光は時に刃の切っ先のごとく鋭い。
「え、あ、あれ? ちょ、ちょっと怖いよ? え、レオ君?」
いつにない殺気に、さすがの白蘭もたじろいだ。
「あ! ひょっとしてレオ君まだ髑髏ちゃんのこと――」
びゅんっ、と風を切る音を聞いた直後に白蘭の長い前髪が数本空を舞った。
「……空気、読め?」
ニコリ。乾いた笑いを貼付けて、グイドはきらりとナイフを光らせた。完全に目が据わっている。本性を見た気がした。
「……ご、ゴメン――てか、怖っ! 髑髏ちゃん、君のそういうとこ知ったら怖がっちゃうよ!?」
「余計なお世話です! それに、クローム姉さんは俺の性格もちゃんと知ってますから」
「そうですよ、白蘭。そういうところも含めてクロームはグイドを弟として認めているんですからねぇ」
くすくすとクロームの身体で笑って、骸は残酷なことをあえて口にした。聡いグイドは骸の言わんとすることにすぐに気付いて唇を引き結んだ。その様子を見た白蘭は少々グイドがかわいそうに思えて、何か手はないかと考え始める。
ちなみにグロ・キシニアの時は『別にいいや〜』で放置して、いつの間にかグロが行動を起こし、『あれ、ヤバくない?』と思う間もなくグロはボコボコのぐちゃどろになって返却された。あれを思うとグイドがなかなか一歩を踏み出せないのも当然というものだ。手を貸してやりたくもなる。
……というのは建前で、単に面白そうだから、というのが9割だった。
「ん〜……そうだ! グロ君を――」
「却下」
早っ、と白蘭もグイドも目を見開いた。
「速攻過ぎるよ骸君! 僕まだ何にも言ってないよ!?」
「あの人間の風上にも置けない男の名前が出た時点で軽蔑に値しますね」
絶対零度。そこだけプチツンドラ地帯。
つい先日グロの隣にベッドを並べかけたグイドなので、明日は我が身とぶるぶる震え出す。誰が指摘するまでもなく、あの事件とその主犯(に与えられた罰)とは大きなトラウマとしてグイドの心に突き刺さっていた。
もちろんグイドにとってもグロは嫌悪対象だが、ある意味で同族なので骸や綱吉や守護者達よりは酷くなかった。同時に、身を挺して懲罰を止められるほど優しくもなれなかった。
「おや、グイド? 震える必要はないでしょう? あなたはアレとは違うのだから……ねぇ?」
(ひぃぃぃ、語尾がっ、語尾に力込め過ぎです骸さん!!)
そんなわけで、クロームの可憐さをブチ壊しにする凶悪な笑みにグイドは今にも泣き出しそうだった。眼が潤んでいる自覚はあっても、表面張力を突破しようと後から後から涙が湧いてくるのでどうしようもない。零さないようにするのが精一杯で、必死でまばたきを堪えた。
「は、ハ〜イっ、はいはいッ、今のなし! ちょっと待って、もっかい考え直すから!」
白蘭は慌てて二人の間に割って入り、頭の中を目まぐるしく回転させた。
やー、まさかあそこまでグロ君が嫌われてるとは。いや、まあ、包帯男みたいになって帰って来たグロ君を見れば、なんとなくわかることだけどさ。それにしても、全身複雑骨折にくわえ上から下まで毛という毛をむしられてつるっつるなあげく誰の字か知らないけどR指定大ハッスルな罵り長文10000字超えを彫り込まれるとかどんだけ!?って話だよね。あれはさすがに僕も震えたよ、うん。切実に。ホント同盟組んどいて良かったな〜、みたいなね。
それにしてもレオ君、一途だなぁ。そういうところもいいと思うけど、もう少しずる賢くなれば楽なんじゃないかな。そりゃあ一度弟ポジションに収まっちゃうとなかなかそれ以上には進みづらいだろうけど、警戒心を持たれてはいないわけだから甘えるフリして擦り寄ってタイミング見計らってにゃんにゃんと――
びゅぉっ
「ぅわっとォ!?」
前髪どころか首ごと持って行きかねない一閃をギリギリで避けて、けれども立っていられず尻餅をつきながら白蘭は額に嫌な汗を浮かべた。数々の死線をくぐり抜けて来た白蘭だったが、今のはちょっとやばかった。
「あ、あっぶなー!! 骸君っ、手加減! 手加減忘れてるから!!」
「手加減? ハッ、じゃあ君のお盛んなイチモツを先端から1センチずつ優しく切り刻むコースにしてあげましょうか? そっちの方が死亡率は格段に下がると思いますがどうでしょういいでしょうやりましょう今すぐにでも!」
槍の先の短剣を分離させる骸(見た目はクロームだが)の眼はマジだ。
「ま、待ってぇぇぇ!! 可愛い顔してやばいこと言わないでよ! すっごい縮んじゃったじゃん!!」
「じゃあすぐに全部なくなりますね。楽でいいです。いい子ですね〜、白蘭は!」
そして倒れたままの白蘭に馬乗りの形で覆いかぶさり、満面の笑みで短剣を振り上げた。
「ま、まま、待って待って待って嬉しくないから全然これっぽっちもマジで――って、骸君骸君」
「はい?」
白蘭に示されるままに顔を上げて、骸はパチクリと瞬きを繰り返した。
「……グ、グイド……」
グイドはそれはもう静かに倒れていた。ご丁寧に胸の上に両手を重ね、棺の中の死体よろしく安らかに穏やかに、あっさりと意識を手放していた。どこらへんがトドメになったのかはわからないが、とりあえず精神的ショックが大き過ぎたらしい。眼を閉じたせいで瞼のふちからポロリと涙を零し、どこの宗教画かと言いたくなるような雰囲気を醸し出していた。
「レオ君。本当に同情するよ……」
白蘭は心底からそう思った。
「……ハートブレイク再び、かぁ。相変わらず前途多難だな、グイド」
「すいません、うちの上司のせいで……」
綱吉の声に応えたのは、胃のあたりを押さえて眉をしかめる正一だった。ちなみに、二人の位置からだとばっちりグイドにトドメを刺したものが見えていた。すなわち、クローム(の姿をした骸)が白蘭に……なんというか、騎乗位的な体勢で乗っかっていたシーンを。
「いやいや、こちらこそ何て言うか、その……下品なジョークというか脅しというか……ねぇ?」
「いえいえ、こちらの方こそ、口には出さずとも何か下品な思考というか提案というか……ねぇ?」
それぞれが抱える問題児とその被害に遭った哀れな少年を思って、二人は溜息をついた。
「大変だね、お互い」
「そうですね……」
「でも誰より大変なのは……」
「……ですね」
同情もそこそこに白蘭の手によって顔にラクガキされようとしている(あぁ、今された)グイドを温かな目で見つめ、今日はグイドも誘って飲もうか、いやいやグイド君はまだ未成年ですよ、なんて交わし合った。
はい、突発グイド→クローム続いちゃいました〜!
白蘭&正ちゃん登場。
グイドはミルフィオーレと同盟前にスパイとして白蘭のそばにくっついてました。しかし結局抗争には発展せず、同盟を結ぶと同時に白蘭に『反省はしてませんが騙していてごめんなさい』と謝ったことがキッカケで気に入られてしまいます。
そして始まる白蘭のちょっかいに、グイドを庇うように実体化した骸さんは罵詈雑言をぶつけます。そんな骸さんに白蘭はときめきどきゅん。
そんなわけで、白蘭はグイドも骸さんも大好き。今のところ悪友的なポジション。
そんな裏設定があったりなかったり。
はい、ごめんなさい!
更に続くかは未定です。
2008.9.30